【労務管理】標準報酬月額の決まり方と注意点
標準報酬月額
標準報酬月額は、健康保険や厚生年金保険の保険料や年金給付額等を算出する基礎として、事務処理の正確化と簡略化を図るために設けられているものです。
国保ではなく、勤め先で社会保険に加入している方は、皆さんに標準報酬月額が決められており、それに基づいて月々の保険料が給与から控除されます。
健康保険料率は、加入している健保組合や都道府県ごとに違います。
標準報酬月額の上限と下限
健康保険と厚生年金保険では、標準報酬月額の上限と下限の等級が異なっています。
- 厚生年金は32等級。標準報酬月額の上限(650,000円)、下限(88,000円)。
- 健康保険は50等級。標準報酬月額の上限(1,390,000円)、下限(58,000円)。
厚生年金の標準報酬月額の上限の決まり方
もともと厚生年金の上限の決め方にはっきりとした基準はなかったようですが
- 高所得だった人に対する年金額があまりにも高くなりすぎないようにする
- 低所得であった人にも一定以上の給付を確保する
を目的に、平成元年改正以後は、上限額が被保険者全体の平均標準報酬月額のおおむね2倍となるように設定する考え方となり、平成16年に法定化されました。
標準報酬月額の上限に該当する被保険者の割合は、昭和60年以降は6~7%で推移しています。
健康保険制度における標準報酬月額の上限の決まり方
健康保険料率については、保険給付費用の予算額等に照らして、おおむね5年を通じて財政運営の健全性を保てるように決められています。
上限額は、最高等級に該当する被保険者の全被保険者に占める割合が1.5%を超えてその状態が継続すると認められる場合に、一定のルールで政令で等級を追加できることになっています。
標準報酬月額が決定されるタイミング
標準報酬月額は、次のタイミングで決定されます。
資格取得時 | 勤務先で社会保険に初めて加入したとき |
定時決定 | 毎年4月~6月に支払われる給与の平均額 |
随時改定 | 昇給や降給等で固定的賃金に変動があって、変動月から3か月間の報酬の平均額が2等級以上の変更となったとき |
ここで、厚生年金と健康保険で標準報酬月額の上限と下限が異なることで、随時改定の手続きにおいて注意が必要になることがあります。
標準報酬月額等級表の上限または下限にかかる随時改定の注意点
標準報酬月額等級表の上限または下限にわたる等級変更の場合は、2等級以上の変更がなくても随時改定の対象となります。
昇給の場合
健康保険
- 従前の標準報酬が1等級・58,000円で報酬月額が53,000円未満の場合、報酬の平均額が63,000円以上で、改定後、2等級・68,000円になります。
- 従前の標準報酬が49等級・1,330,000円の場合、報酬の平均額が1,415,000円以上で、改定後、50等級・1,390,000円になります。
厚生年金保険
- 従前の標準報酬が1等級・88,000円で報酬月額が83,000円未満の場合、報酬の平均額が93,000円以上で、改定後、2等級・98,000円になります。
- 従前の標準報酬が31等級・620,000円の場合、報酬の平均額が665,000円以上で、改定後、32等級・650,000円になります。
降給の場合
健康保険
- 従前の標準報酬が2等級・68,000円の場合、報酬の平均額が53,000円未満で、改定後、1等級・58,000円になります。
- 従前の標準報酬が50等級・1,390,000円で報酬月額が1,415,000円以上の場合、報酬の平均額が1,355,000円未満で、改定後、49等級・1,330,000円になります。
厚生年金保険
- 従前の標準報酬が2等級・98,000円の場合、報酬の平均額が83,000円未満で、改定後、1等級・88,000円になります。
- 従前の標準報酬が32等級・650,000円で報酬月額が665,000円以上の場合、報酬の平均額が635,000円未満で、改定後、31等級・620,000円になります。
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