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【派遣延長が短期の場合には、日雇い派遣に当たらないように注意が必要です。】


【派遣期間終了後に派遣先から1週間延長の申入れがあった際の注意点】

労働者派遣では、30日以内の雇用期間を定めて派遣するいわゆる「日雇い派遣」は、必要な雇用管理がなされず、派遣労働者の保護に欠けることから、原則禁止とされています。
ただし、一部の職種、60歳以上や昼間の学生、年収500万円以上等については例外として日雇い派遣が可能とされています。

日雇い派遣禁止についての厚生労働省の詳細はこちらです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000644420.pdf

「30日未満の派遣期間延長を派遣先から依頼があった場合には、日雇い派遣に該当しないか注意が必要となります。」

たとえば、労働者Aさんを派遣期間3カ月、雇用期間3カ月で労働者派遣を行っている場合に、派遣先から繁忙の為、1週間だけ派遣期間の延長をお願いされる場合があるとします。派遣先から改めて1週間の派遣就業の依頼があった場合、日雇い派遣の例外に当たる60歳以上等や無期雇用の方を派遣元会社が派遣できるならば、問題は無いのですが、Aさん以外に派遣できる人がいない場合にはどうすればよいのか、という話になります。

Aさんを雇用期間3カ月終了後に継続雇用し、1週間の雇用期間を再締結後に派遣する事は日雇い派遣に該当します。この場合雇用期間は1週間と判断されます。

これを防ぐためには、事前にAさんと雇用契約期間変更の同意を得た上で、雇用契約期間を3ヶ月と1週間の期間に変更する必要があります。(例1月1日~3月31日まで→1月1日~4月7日の期間に変更)これにより30日以内の雇用期間とならず、日雇い派遣には該当しない形になると3局の労働局に確認して問題ないと言われています。

上記案件に該当し、気になる場合は管轄の労働局にご確認していただければと思います。

【労務管理】給与から厚生年金保険料が天引きされていたのに年金記録がない場合


「給与から厚生年金保険料を天引きされていたのに、その間の年金加入の記録がない・・」

故意にせよ過失にせよ、事業主が従業員の給与から厚生年金保険料を天引きだけして、年金事務所に資格取得の届出や保険料の納付をしないことは、絶対にあってはいけません。

しかし、そのようなことが起きてしまい、すでに国が保険料を徴収する権利が時効によって消滅しているような場合、次のように対処されます。

被保険者から厚生年金保険料を源泉徴収(天引き)していたにもかかわらず、事業主が社会保険事務所(現在は、年金事務所)に対して、当該保険料の納付および被保険者の資格関係等の届出を行っていたことが明らかでないと日本年金機構で訂正が行える事案または地方厚生局で地方年金記録訂正審議会より記録訂正の答申があった事案について

・日本年金機構は、年金の保険給付の対象とするための年金記録訂正を行う。
・事業主は、時効(2年間)消滅後であっても、納付すべきであった保険料を納付することができることとし、日本年金機構がその納付を勧奨する。

(引用元)厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する公表について

給与から厚生年金保険料が天引きされていたのに年金記録がない人は、その期間の記録があったものとして決定されます。
※ただし、事業主が届出や納付をしていない事実を当人が知っているような場合はこの限りではありません。

事業主や役員が保険料を納付しない場合

日本年金機構から勧奨された保険料を事業主や役員が納付しない場合、厚生労働省はその事業所名・事業主または役員等の氏名を公表します。

公表期限までに特例納付保険料の納付申出をしなかった事業主など

年金加入記録に「もれ」や「誤り」があった場合

今はねんきん定期便があるので、年金加入記録はある程度、各人で確認しやすい体制になっています。
「給与から引かれてるのに記録がない?金額が間違っている?」という場合は、年金事務所に問い合わせをすることができます。

【労務管理】介護保険制度とは


以前は、親の介護は子どもや家族が各家庭の中で行うことが一般的でした。
しかし、高齢者の増加や核家族の増加で介護による離職が社会問題となったため、家族の負担を軽減し、社会全体で介護を支えることを目的に2000年に介護保険制度が創設されました。

介護保険法では、総則で目的を次のように定めています。

介護保険法

(目的)
第一条
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

介護保険を受けられる人(被保険者)

介護保険を受けられる人(被保険者)は次のとおりです。

第2号被保険者40歳から64歳まで『加齢に伴う特定疾病』が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
第1号被保険者65歳以上『要介護認定』または『要支援認定』を受けたときに介護サービスを受けることができます。
介護認定等を受けるようになった原因は何でもOKです。

特定疾病とは

65歳以上の高齢者に多く起きている加齢との関係が認められる疾病で、3~6ヶ月以上継続して『要介護状態』または『要支援状態』となる場合が多いもの。

  • がん(末期)
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

介護保険料を納付する人

介護保険料を納付する人(被保険者)は次のとおりです。

第2号
被保険者
40歳から64歳まで【40歳の誕生日の前日が属する月】から【65歳の誕生日の前日が属する月の前月】まで納付します。
健康保険料と一緒に介護保険料を納めるので、勤め先で健康保険に加入している場合は給与から天引きされます。
第1号
被保険者
65歳以上【65歳の誕生日の前日が属する月】から納付します。
市町村と特別区に納めますが、原則として年金から天引きされます。

65歳になったら気を付けるポイント

高年齢者雇用安定法で「70 歳までの定年の引上げ」など70歳までの就業機会の確保が努力義務とされたので、65歳以降の方を雇用する機会も増えてきたと思います。

65歳以降の社会保険の取り扱いで気を付けるポイントは次のとおりです。

介護保険料勤め先で給与から天引きするのは【65歳の誕生日の前日が属する月の前月】までの分です。
【65歳の誕生日の前日が属する月】からは、本人が直接、市町村等に納めるようになります。
健康保険料65歳以降も引き続き給与から天引きします。
健康保険は【75歳になる誕生日の前日】まで勤め先で加入できます。
厚生年金保険料原則として【70歳に到達する誕生日の前日】に資格を喪失します。
70歳以上も雇用を続ける場合は70歳以上被用者該当の届出が必要ですが、保険料は徴収されず、年金額にも反映されません。
また、70歳以上の方も一定の要件を満たした場合、申出することで厚生年金保険に高齢任意加入をすることもできます。

また、60歳以上の人を退職後1日もあけずに再雇用したとき、就業規則等を添えて資格の喪失と取得を年金事務所に同時に届け出をすることで、標準報酬月額を再雇用された月から変更することができます。


再雇用後は給与が下がる場合が多いと思いますが、届出をすることで再雇用した月から下がった給与に応じた社会保険料となります。

【労使協定方式で地域指数を選択する際の留意点】


【派遣就業先の地域指数とは限りません】

労使協定方式の労働者派遣を行う場合、国が定める、同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額に、地域指数を掛けた金額と同等以上の賃金を派遣労働者に支払う必要があります。
この地域指数は、必ずしも就業している派遣先場所にはなりませんので、注意が必要です。

労働局は地域指数の選択方法として派遣先事業場が、ある程度の事務的能力が必要とされていることから原則として派遣先会社の雇用保険の適用事業所の地域指数を利用するようにと言われます。
例えば茨城県にある派遣先就業場所で派遣労働者が働いていたとしても、茨城の派遣先会社の本社が東京にあり、手続き等の事務処理を東京本社で行っている際は、東京が雇用保険の適用事業所になり東京の地域指数を利用する、という事になります。

令和6年8月27日発表の局長通達本文に下記記載があります。

【「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」については、具体的には、工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断することとなり、常に雇用保険の適用事業所と同一であるわけではない。また、協定対象派遣労働者が実際に就業する場所ではなく、例えば、派遣先の事業所が東京都にあるが、協定対象派遣労働者が実際に就業する場所が埼玉県である場合「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」は東京都である。 】

また、労使協定方式に関するQ&A(集約版)に下記の記載があります。

【労使協定Q&A】
問2-18 派遣元事業主が地域指数を選択する際、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」は具体的にどのように判断すればよいか。

答 「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」については、工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断することとなり、常に雇保険の適用事業所と同一であるわけではない。

上記の点から必ずしも雇用保険の適用事業所となるわけではないとされています。
ただし、派遣元会社は派遣先会社の就業場所が独立性や高度な事務能力があるかを判断することは不可能なため、派遣先会社に確認をすることになります。

通達にある【経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断】
Q&Aにある【経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること】

のある程度の、基準はどこから認められるのかを各都道府県の労働局に確認してみましたが、答えは労働局によって見解が異なり、具体的な線引きが出来ず、実態で判断するというのが労働局の答えでした。

派遣先から独立している事業場と聞いたから就業場所の地域指数を使用していたが、労働局の調査が入り、実際には派遣先就業場所が独立した事業場と認められない場合は、正しい地域指数により賃金額を計算し、不足がある場合には遡って賃金を労働者に支払う必要も出てきます。派遣先から独立性のある事業場と聞いていたので・・・と言っても通用しない事になりますので、慎重に判断することが必要です。

【労務管理】2025年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が変わります


高年齢雇用継続給付とは

雇用継続給付は、職業生活の円滑な継続を援助・促進することを目的としたものです。

高年齢雇用継続給付は、60歳になった時等に比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働く60歳以上65歳未満の一定の雇用保険被保険者に支給されます。

高年齢雇用継続給付のなりたち

平成6年に定年年齢が60歳に義務化され、平成10年に施行されました。
また、老齢厚生年金の支給開始年齢は平成13年度から60歳から65歳まで段階的に引上げになっています。


それらを背景に、高年齢雇用継続給付は平成7年4月に創設されましたが、65歳までの雇用確保の義務や70歳までの定年引上げ・定年廃止などが努力目標として設けられ、高年齢者の雇用を確保する環境が進展していることで給付率の見直しが進められています。

2025年4月1日からの支給率

60歳の誕生日の前日※が令和7年3月31日以前各月に支払われた賃金の0~15%が支給されます。
(これまでと同じ支給率)
60歳の誕生日の前日※が令和7年4月1日以降各月に支払われた賃金の0~10%が支給されます。
(変更後の支給率)
※60歳誕生日の前日時点で雇用保険の被保険者期間が5年未満の場合は、5年を満たすこととなった日と読みかえます。

現行の給付率と、2025年4月からの給付率を比較すると次のようになります。

60歳到達等時点の賃金月額と比較したときの賃金の低下率が75%以上の場合は、これまでと変わらず高年齢雇用継続給付は支給されません。

賃金の低下率が74.5%以下になると支給されますが、2025年4月以降は支給率が下がり、最高でも10%の支給となります。

【労務管理】標準報酬月額の決まり方と注意点


標準報酬月額

標準報酬月額は、健康保険厚生年金保険保険料や年金給付額等を算出する基礎として、事務処理の正確化と簡略化を図るために設けられているものです。

国保ではなく、勤め先で社会保険に加入している方は、皆さんに標準報酬月額が決められており、それに基づいて月々の保険料が給与から控除されます。

健康保険料率は、加入している健保組合や都道府県ごとに違います。

標準報酬月額の上限と下限

健康保険と厚生年金保険では、標準報酬月額の上限と下限の等級が異なっています。

  • 厚生年金は32等級。標準報酬月額の上限(650,000円)、下限(88,000円)。
  • 健康保険は50等級。標準報酬月額の上限(1,390,000円)、下限(58,000円)。
画像は協会けんぽ宮城県の場合。協会けんぽHPから引用。

厚生年金の標準報酬月額の上限の決まり方

もともと厚生年金の上限の決め方にはっきりとした基準はなかったようですが

  • 高所得だった人に対する年金額があまりにも高くなりすぎないようにする
  • 低所得であった人にも一定以上の給付を確保する

を目的に、平成元年改正以後は、上限額が被保険者全体の平均標準報酬月額のおおむね2倍となるように設定する考え方となり、平成16年に法定化されました。

標準報酬月額の上限に該当する被保険者の割合は、昭和60年以降は6~7%で推移しています。

健康保険制度における標準報酬月額の上限の決まり方

健康保険料率については、保険給付費用の予算額等に照らして、おおむね5年を通じて財政運営の健全性を保てるように決められています。
上限額は、最高等級に該当する被保険者の全被保険者に占める割合が1.5%を超えてその状態が継続すると認められる場合に、一定のルールで政令で等級を追加できることになっています。

標準報酬月額が決定されるタイミング

標準報酬月額は、次のタイミングで決定されます。

資格取得時勤務先で社会保険に初めて加入したとき
定時決定毎年4月~6月に支払われる給与の平均額
随時改定昇給や降給等で固定的賃金に変動があって、変動月から3か月間の報酬の平均額が2等級以上の変更となったとき
※支払い基礎日数等の細かい要件もありますが、ここでは記載を省きます。

ここで、厚生年金と健康保険で標準報酬月額の上限と下限が異なることで、随時改定の手続きにおいて注意が必要になることがあります。

標準報酬月額等級表の上限または下限にかかる随時改定の注意点

標準報酬月額等級表の上限または下限にわたる等級変更の場合は、2等級以上の変更がなくても随時改定の対象となります。

昇給の場合

健康保険
  • 従前の標準報酬が1等級・58,000円で報酬月額が53,000円未満の場合報酬の平均額が63,000円以上で、改定後、2等級・68,000円になります。
  • 従前の標準報酬が49等級・1,330,000円の場合報酬の平均額が1,415,000円以上で、改定後、50等級・1,390,000円になります。
厚生年金保険
  • 従前の標準報酬が1等級・88,000円で報酬月額が83,000円未満の場合報酬の平均額が93,000円以上で、改定後、2等級・98,000円になります。
  • 従前の標準報酬が31等級・620,000円の場合報酬の平均額が665,000円以上で、改定後、32等級・650,000円になります。

降給の場合

健康保険
  • 従前の標準報酬が2等級・68,000円の場合報酬の平均額が53,000円未満で、改定後、1等級・58,000円になります。
  • 従前の標準報酬が50等級・1,390,000円で報酬月額が1,415,000円以上の場合、報酬の平均額が1,355,000円未満で、改定後、49等級・1,330,000円になります。
厚生年金保険
  • 従前の標準報酬が2等級・98,000円の場合、報酬の平均額が83,000円未満で、改定後、1等級・88,000円になります。
  • 従前の標準報酬が32等級・650,000円で報酬月額が665,000円以上の場合、報酬の平均額が635,000円未満で、改定後、31等級・620,000円になります。

【派遣元責任者講習の有効期限について】


【うっかり受講を忘れない為に】

派遣元責任者講習の有効期限は3年間です。同じ方が派遣元責任者を続けるのならば、期限切れになる前に講習を受ける必要があります。
派遣事業を運営する上で、派遣元責任者は必ず派遣元会社に配置している必要があります。3年に一度の事なのでうっかり有効期限を過ぎている事や、派遣元責任者の急な退職、病気による休職など思いもよらず派遣元責任者が不在状態になる事がございます。
許可制の派遣業では派遣元責任者の不在は許されない事ですので、注意が必要です。
期限切れ、不在状態を予防するために複数の派遣元責任者を選任し、講習日時をづらして受講するなど、空白期間が生じないようにするのも一つの対策です。

【労務管理】労働者と使用者とは


「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」が労働基準監督署に設置されます

2024年11月のフリーランス新法の施行に合わせて、「自分はフリーランスとして働いているけど、働き方が労働者なんじゃないかな・・?」と思っているフリーランスの方に向けた相談窓口が全国の労働基準監督署に設置されます。

※ここでのフリーランスは、業務委託を受ける事業者のことを指します。

フリーランスとして働く人の中には、実際の働き方は労働基準法上の労働者なのに、契約上は自営業者として扱われて、法律に基づく正しい保護が受けられていないといった問題が指摘されています。

労働基準法上の「労働者」にあたるかどうかは、「業務委託」や「請負」などの契約の形式などにかかわらず、実際の働き方等をみて総合的に判断されます。

厚生労働省が出している働き方の自己診断チェックリスト(フリーランス向け)

労働基準法が適用される労働者とは

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法上の労働者にあたるかの判断は、『使用従属性』が認められるかどうか等によって判断されます。

『使用従属性』とは、次の両方の基準をまとめて呼んだものです。

  1. 他人の指揮監督下で労働していること
  2. 報酬が指揮監督下にある労働の対価として支払われていること

「使用従属性」に関する判断基準

「指揮監督下の労働」であること
仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由発注者から仕事を貰った時に、それを受けるかどうか等、自分で決められるか
業務遂行上の指揮監督仕事の内容や、やり方について、発注者から具体的に指示をされて指揮命令されているか
拘束性勤務場所と時間が発注者等から指定されて管理されているか
代替性(指揮監督関係を補強する要素)発注者から受けた仕事を、自分の代わりに誰かにやってもらったり、自分の判断で補助者を使うことが認められているか
報酬の労務対償性報酬のベースが、発注者等の指揮監督の下で行う作業時間等となっているか
「労働者性」の判断を補強する要素
事業者性仕事に必要な機械等は発注者とフリーランスのどちらが用意しているか。
フリーランスが機械等を所有していて発注された作業に当たっている場合などは、自らが事業者として働いている性質が強くなると考えられます。
専属性の程度他の発注者等の業務を行うことが制度上制約されたり、他の発注者等の業務を行うことが時間的に余裕がなく難しかったりする場合等は労働者性が強いと考えられます。
その他採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること 等

労働基準法が定める使用者とは

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

労働基準法で使用者とは、次のように定められています。

・ 事業主

法人そのもの、個人事業主

・ 事業の経営担当者

法人の代表者、役員等

・労働者に関する事項について、事業主のために行為をする者

労働条件の決定、業務命令の発出、具体的な指揮監督等を行うもの(上司の命令の伝達者にすぎない場合は除きます)

使用者は、事業主だけでなく、役員等も含まれ、労働者に指揮命令をして労働をさせ、労働の対価として報酬を支払います。

「松下プラズマディスプレイ事件」(最高裁判所第2小法廷 平成21年12月18日 判決)では、偽装請負いの状態で派遣されていた労働者は『注文者から直接具体的な指揮監督を受けて作業に従事していた』が、「雇用契約は注文者以外と結ばれていた」「注文者は採用に関与していない」「注文者が給与の支払い額を決定していたわけではない」等の事情で、注文者とその労働者の間に雇用関係が黙示的に成立していたとはいえない、としています。

労働の具体的な指揮監督をするだけでは、使用者性が認められないといえます。

【労務管理】フリーランス新法が2024年11月から施行されます


フリーランス新法とは

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」は、フリーランスの⽅が適正に取引ができ、安定して働ける環境を整備するため、フリーランスに業務委託を発注する事業者に対して義務付けを行う法律です。


内容としては、大きく「取引の適正化」「就業環境の整備」のふたつがあります。

この法律で対象になるフリーランスとは
・従業員を使用していない個人
・従業員を使用していない代表者だけの法人(一人親方や一人社長)
また、ここでの従業員は『週の所定労働時間が20時間以上かつ継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者(または派遣労働者)』を指します。そのため、事業を手伝っているのが同居親族のみの場合は、従業員を使用していないとみなされてフリーランスに該当します。

取引の適正化:発注事業者に義務付けられること

取引の適正化については、公正取引委員会と中小企業庁が所管し、調査、検査、勧告、命令ができ、命令に違反した場合等には罰金等となります。

フリーランスに業務委託を発注する事業者に義務付けられる内容は、発注事業者の属性に応じて異なります。
なお、消費者がフリーランスに業務委託を発注する場合や、事業者間取引であっても業務委託ではない売買取引の場合は、この法律の対象になりません。

業務委託事業者の場合

業務委託事業者とは、フリーランスに業務を委託する事業者で、法人、個人、従業員の有無を問いません。
そのため、フリーランスがフリーランスに業務を委託する場合も含まれます。

義務等の内容
  • 書面やメール等で取引条件を明示すること
明示すべき事項
  1. 業務委託事業者と受託者の名称等
  2. 業務委託をした日
  3. 給付の内容
  4. 給付や役務の提供を受領する期日・場所
  5. 給付の内容を検査する場合は検査を完了する期日
  6. 報酬の額と支払期日
  7. 現金以外で支払う場合は、その方法で支払う額と支払い方法に関すること

特定業務委託事業者の場合

特定業務委託事業者とは、フリーランスに業務を委託する事業者で、「従業員を使用する個人」「従業員を使用する法人」「二以上の役員がいる法人」のことを指します。
資本金の額や企業の規模については要件がありません。

義務等の内容
  • 書面やメール等で取引条件を明示すること
  • 報酬を支払う期日等のルール
報酬の支払期日等のルール
  1. 報酬の支払い日は、給付などを受領した日から60日内かつできるだけ短い期間内で定める
  2. フリーランスに業務の全部または一部を再委託をする場合は、「再委託である旨」「元委託者の名称等」「元委託業務の支払期日」を明示して、元委託の支払期日から起算して30日以内かつできるだけ短い期日で報酬支払い日を定める
  3. 2の場合で元委託者から前払いを受けた場合、フリーランスの業務に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければいけない

1.2が定められない場合は、それぞれ給付を受領した日から60日、30日を経過する日が支払期日とみなされます。

また、支払期日は「〇月〇日まで」「納品後〇日以内」などの定め方は支払期日を定めているとは認められません。
「〇月〇日」「毎月〇日締切、翌月△日支払い」などのように定める必要があります。

1か月以上の業務委託をしている特定業務委託事業者の場合

特定業務委託事業者のうち、フリーランスに1か月以上の業務委託をしている事業者のことを指します。

義務等の内容
  • 書面やメール等で取引条件を明示すること
  • 報酬を支払う期日等のルール
  • 発注事業者としての7つの禁止行為のルール
7つの禁止行為
  1. フリーランスに責められるべき理由や落ち度、過失がないのに、発注物を受け取り拒否することの禁止
  2. フリーランスに責められるべき理由や落ち度、過失がないのに、発注時に決めていた報酬を発注後に減額することの禁止
  3. フリーランスに責められるべき理由や落ち度、過失がないのに、返品することの禁止
  4. 極端に低い報酬にすることの禁止
  5. 発注物の品質を維持する目的などきちんとした理由がないのに、発注者が強制的にフリーランスに物を購入させたりサービスを利用させたりすることの禁止
  6. 発注者のために金銭や役務などを不当に提供させてフリーランスの利益を害することの禁止(協賛金の要請など)
  7. フリーランスに責められるべき理由や落ち度、過失がないのに、発注を取り消ししたり内容を変更させたり、受領した後に発注側が作業に必要な費用を負担せずにやり直しや追加作業をさせることの禁止

就業環境の整備:発注事業者に義務付けられること

就業環境の整備については、厚生労働省が所管し、検査、勧告、命令ができ、命令に違反した場合等には罰金等となります。

就業環境整備が義務付けられるのは特定業務委託事業者で、4つのルールが義務付けられます。

1.募集情報の的確な表示について

広告等で広くフリーランスの業務委託を募集する場合、虚偽の募集内容や誤解を生じさせる募集内容にしてはいけません。
なお、特定の1人に対して業務委託を打診する場合は、既に契約交渉段階に入っていると想定されるので、この内容に含まれません。2人以上の複数人を相手に打診する場合は対象になります。

的確表示の対象となる募集情報事項
業務の内容仕事の内容、必要な能力や資格、検収の基準、不良品の取扱いに関する定め、成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲、違約金に関する定めなど
就業の場所、時間及び期間に関する事項仕事をする場所、時間、納期、期間など
報酬に関する事項支払期日、支払方法、諸経費、知的財産権の譲渡・許諾の対価など
契約の解除に関する事項契約の解除事由、中途解約の際の費用・違約金に関する定めなど
特定受託事業者の募集を行う者に関する事項名称や業績など

2.妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮

6カ月以上の期間行う業務委託、または契約更新で6カ月以上の期間継続して行うこととなる業務委託をするフリーランスから申出があった場合、特定業務委託事業者は個別に必要な配慮をしなければいけません。

配慮の申出ができるフリーランスは、現に育児介護等と両立しつつ業務を行うもの、またはそういった具体的な予定があるものです。

フリーランスから申出があったのに、それを無視するといったことは法違反となります。
また、申し出の内容等にはプライバシーに関する情報も含まれるので、情報の共有範囲は必要最低限にするなどプライバシー保護の観点にも気を付ける必要があります。

  • 配慮の申し出の内容などを把握する。
  • 配慮の内容や取りうる選択肢を検討する。
  • 配慮の内容が確定したら、フリーランスに速やかに伝える。
  • 十分に検討しても業務の性質等によってやむを得ず配慮できない場合はその旨を伝える。

なお、特定業務委託事業者には、可能な範囲で対応を講じることが求められています。
申し出の内容を必ず実現することまで求められているわけではありません。

3.ハラスメント対策についての体制整備など

セクハラ、マタハラ、パワハラを行ってはいけないことはもちろん、これらの相談に応じる体制の整備などをしなければいけません。
相談を行ったフリーランスに対して契約の解除などの不利益な取扱いをしてもいけません。

これらは社内の労働者に対して啓発している社内体制やツールを活用するのも良さそうです。

4.契約の解除についてのルール

特定業務委託事業者は、6カ月以上の期間行う業務委託または契約更新で6カ月以上の期間継続して行うこととなる業務委託をしているフリーランスの契約を解除する場合や、契約期間満了後に更新をしない場合、少なくとも30日前までにその予告をしなければいけません。

両者間の合意による契約解除の場合はこの法律に該当しませんが、その合意がフリーランスの自由な意思によるものなのかは慎重に判断する必要があります。

また、フリーランスが契約解除を予告された日から契約が満了する日までの間に、契約解除の理由を開示するよう求めてきた場合は、書面やメール等で理由を開示しなければいけません。ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合などは例外となります。

事前予告の例外事由と理由開示の例外事由は次のとおりです。

【事前予告の例外事由】

  • 災害やその他やむを得ない事由で予告することが困難な場合
  • フリーランスに責めに帰すべき事由があり、直ちに契約を解除する必要がある場合
  • 再委託の際、元委託者からの契約の全部又は一部の解除等によって、フリーランスの業務の大部分が不要となってしまう等、直ちに契約を解除せざるを得ない場合
  • 契約の更新によって継続して業務委託を行う場合等で、業務委託の期間が30日間以下の短期間である一の契約(個別契約)を解除しようとする場合
  • 基本契約が締結されている場合で、フリーランスの事情で相当な期間、個別の契約が締結されていない場合

【理由開示の例外事由】

  • 第三者の利益を害するおそれがある場合
  • 他の法令に違反することとなる場合

【令和6年10月から教育訓練給付金が拡充されます】


【資格学校やプログラミングスクールなど様々な学校でも利用可能】

令和6年10月から雇用保険制度内の教育訓練給付金の給付率が拡大となります。
特定一般教育訓練給付金の給付率が最大40%から50%へ。
専門実践教育訓練給付金の給付率が最大70%から80%へ。
教育訓練給付制度は、働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。

教育訓練給付金は条件を満たした雇用保険被保険者、被保険者であった者が学校等に支払う受講料等を20%~最大80%までを支給する制度です。

現在、リ・スキリング(学びなおし)として、資格取得や他業種に活かす専門知識を学ぶ事が珍しくありません。
資格学校やプログラミングスクールなどでも対応している学校があります。労働者、会社側でもこの制度がある事を知らないという方も多いと思います。もし、今後資格取得などをお考えの方は自分の通う学校が給付金制度を利用できるか等、確認してみることをお勧めします。

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