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【労務管理】無期転換申込権が発生する有期労働契約更新時の明示義務


令和6年4月から、無期転換権が発生する有期労働契約を結ぶとき、使用者は労働者に対して次のことを伝えなければいけません。

【参考】2023/11/01掲載 【労務管理】2024年4月から労働条件明示が変更・無期転換ルールについて 

  1. 無期転換を申し込むことができることを伝える
  2. 無期転換後の労働条件を書面で明示する 

たとえ労働者が「無期転換はしません」と言ってきたとしても、法律上義務になっているので明示する必要があります。

そもそも無期転換申込権とは・・

対象者期間の定めがある雇用契約を結んでいる労働者
権利がある期間契約期間が通算して5年を超える雇用契約を結んだとき、その契約期間の初日から末日までの間
内容自身の雇用契約を【期間の定めがある契約】から【期間の定めがない契約】に変更することを依頼する権利

労働者が無期転換を申し込むと、使用者は申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点で成立します。使用者は申し出を拒否することはできません。
無期労働契約に転換されるのは、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日からです。

労働条件通知書の書き方

厚生労働省のHPに労働条件通知書のひな形がありますが、令和6年4月1日以降の様式(一般労働者用;常用、有期雇用型)には次の内容が追記されています。

明示義務に漏れがないようにひな形が変更されていて助かりますね。
漏れなく記入できれば問題ありませんが、表現がちょっと難しいと思うので、できるだけ平たく説明してみます。

更新上限の有無とは

更新上限とは、 有期労働契約の「通算契約期間」または「更新回数」の『上限』のことを指しています。

「契約更新しても合計で〇年(△回)までですよ」ということです。

使用者は、令和6年4月1日以降の有期労働契約については、更新上限がある場合はその内容を書面で明示しなければいけません。有期労働契約は、何度か更新することがあると思いますが、契約締結の当初だけではなくて、更新のたびに明示が必要になります。

例えば、次のような記載が考えられます。

・更新上限の有無( 無 )

・更新上限の有無( 有(更新10回まで/ 今回の契約は更新2回目))

・更新上限の有無( 有(通算契約期間5年まで/ 今回の契約末日時点で、通算契約期間3年6カ月))

労働契約法に定める同一の企業との間での通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結の場合とは

労働契約法に定める同一の企業との間での通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結の場合とは 、次の有期労働契約を締結する場合のことを指しています。

誰が期間の定めがある雇用契約を結んでいる人(いわゆる契約社員)
何をしたとき 同じ勤務先で「最初に有期雇用契約で入社した日」から「今回の雇用契約期間の末日まで」の期間を数えると、5年を超えるとき

(例)1回の雇用契約期間が3年の契約社員が更新する場合

最初の雇用契約 R2年4月1日~R5年3月31日
今回の雇用契約 R5年4月1日~R8年3月31日

最初に入社した日 R2年4月1日
今回の雇用契約期間の末日 R8年3月31日

⇒通算すると6年
⇒【通算契約期間が5年を超える有期労働契約の締結】に該当

該当した場合は、次のことが必要になります。

  1. 無期転換を申し込むことができることを伝えて
  2. 無期転換後の労働条件を書面で明示 

上の(例)の場合ですと、労働条件通知書の内容を次のように書くようになります。

本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(R8年4月1日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。

無期転換後の労働条件を書面で明示とは

『無期転換後の労働条件を書面で明示する』ですが、これは勤務先がどのように定めているかによります。

そもそも「『無期転換=期間定めがない契約』って『正社員になる』ってことなんじゃないの?」と思う方も多いと思います。
それがそうとも限らないのです。ややこしいですよね。

『期間の定めがある契約社員』と『期間の定めがない契約社員』と『正社員』と、それぞれ職務内容や職責などに応じて給与や手当を異なるものに定めることは、勤務先(会社)の定め方によります。
まだ定めていない事業所で、該当する人がでてきそうな場合は速やかに決める必要があります。すぐに該当する方がいなくても、有期契約労働者がいる事業所では、将来にわたっての人材活用を考える上で無期転換をした後の待遇を決めておくことは重要なことだと思います。

この場合の本契約からの労働条件の変更の有無( 無 ・ 有(別紙のとおり) )

労働条件通知書には、『期間の定めがある雇用契約』と『無期転換後の雇用契約』で労働条件に違いがあるかどうかを記載してください。

別紙は、就業規則があれば該当ページを比較できるようそれぞれ用意すればいいと思いますし、就業規則の作成義務がないところであれば比較できる書面を用意すると良いと思います。

また、無期転換後の労働条件について、正社員等のフルタイム労働者との均衡を考慮した点を説明する努力も求められます。
無期雇用フルタイム労働者は、同一労働同一賃金で正社員との間の不合理な待遇差の解消を目指す対象に含まれませんが、従業員に長く働いてもらうためにも待遇についての均衡をきちんと考え、説明できるようにしておくのは大切です。

有期雇用特別措置法による特例とは

有期雇用特別措置法による特例とは、簡単にいうと「無期転換ルールが適用されない特例」のことです。

特例の対象者になるのは、次のどちらかです。


  1. 「5年を超える一定の期間内に完了する業務」に就く高度の専門知識等を有する年収1,075万円以上の有期雇用労働者(高度専門職)
  2. 定年に達した後、引き続き雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)

※高度専門職は、次のいずれかにあてはまる方が該当します。

  1. 博士の学位を有する者
  2. 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
  3. ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
  4. 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
  5. 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
  6. システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
  7. 国等(※)によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者(※)国、地方公共団体、一般社団法人または一般財団法人その他これらに準ずるものをいいます。

※次の場合は「継続雇用の高齢者」にならず、特例の対象にならないので注意してください。

  • A事業場で定年退職した後、B事業場で新たに有期労働契約で雇用された労働者
  • 定年に達しない時点で無期労働契約から有期労働契約に転換した労働者 

特例の対象となるには、事業主が雇用管理措置の計画を作成して提出し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

労働条件通知書には、特措法の認定を受けている場合、該当する内容に応じて記入するようになります。

【有期雇用特別措置法による特例の対象者の場合】
無期転換申込権が発生しない期間: Ⅰ(高度専門)・Ⅱ(定年後の高齢者)
Ⅰ 特定有期業務の開始から完了までの期間(   年  か月(上限10年))
Ⅱ 定年後引き続いて雇用されている期間

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