【労務管理】自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」(令和4年厚生労働省告示第367号)により改正され、令和6年4月1日から適用されます。
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)とは
トラックなど自動車運転者の労働時間等の労働条件の向上を図るため、業務の特性を踏まえて、労働基準法では規制が難しい次の内容を大臣告示として平成元年に定めたものです。
労働基準法では「労働時間」や「休憩時間」を定めていますが、改善基準告示では主に次の内容を定めています。
拘束時間 | 始業から終業までのすべての時間。 休憩や仮眠時間を含みます。 |
休息期間 | 終業してから次の始業までの間。 勤務と勤務の間の自由な時間で、労働者にとって全く自由な時間です。 |
運転時間 | 運転している時間。 |
連続運転時間 | 連続して運転している時間。 |
改善基準告示の対象者
改善基準告示の対象者は、労働基準法第9条にいう労働者であって、四輪以上の自動車の運転業務を主にする人です。
- 労働者のうち、同居の親族のみを使用する事業または事業所に使用される者および家事使用人は除きます。
- 個人事業主は、労働基準法での労働者ではないので直接の対象とはなりません。しかし、国土交通大臣が旅客自動者運送事業者や貨物自動車運送事業者への勤務時間や乗務時間の告示を定めており、その基準で改善基準告示が引用されているので、実質的に改善基準告示の順守が求められています。
自動車の運転の業務を主にしているかどうか
自動車の運転の業務を主にしているかどうかは、個別に実態に応じての判断されます。
物や人を運搬するために自動車を運転する時間が、実際に労働時間の半分を超えていることなどが判断要素となります。
また、運送を事業としてとして行っていなくても、
- 工場などの製造業における配達部門の自動車運転者
- 自家用自動車の自動車運転者
など、自動車運転者を労働者として使用していれば改善基準告示は適用されます。
改正の背景
厚生労働省島根労働局監督課が出している「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)の改正内容(トラック)について」によると、トラック運転者は、全産業平均と比べて『年齢が高く』『実労働時間数が長く』『所定内給与額が低い』傾向にあります。
また、令和3年度の脳・心臓疾患の労災支給決定件数は、
道路貨物運送業32.5%、
貨物自動車運転者30.8%
と、業種別・職種別でそれぞれ最も高い結果でした。
脳・心臓疾患の労災認定基準では、労働時間と睡眠時間について重要な要件のひとつとして見ています。
これらの観点や、働き方改革における時間外労働の上限規制(年間960時間以内)をふまえて改正にいたりました。
改善基準告示の改正内容
トラック運転者
- 1年、1カ月の拘束時間
1年の拘束時間は3,300時間以内、かつ、1カ月の拘束時間は284時間以内です。
≪例外≫
労使協定を結んだ場合は
・1年の拘束時間が3,400時間に収まる範囲内で
・1年のうち6カ月までは1か月の拘束時間を310時間まで
にできます。
ただし、1カ月の拘束時間が284時間を超える月は連続3カ月までです。
1カ月の時間外労働および休日労働の合計時間数は100時間未満になるよう努力しなければいけません。
- 1日の拘束時間
1日(始業時刻から数えて24時間)の拘束時間は13時間以内が基本です。
延長する場合の上限は15時間で、14時間を超えるのは週2回までが目安です※。
1日の拘束時間が13時間を超えて延長する場合は、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める必要があります。
回数は週2回までが目安ですが、14時間を超える日が連続することは望ましくありません。
※一定の要件を満たす宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで16時間まで延長ができます。
- 1日の休息期間
休息期間(終業後、次の始業までの間)は継続11時間以上与えるように努めることを基本として、継続9時間を下回ってはいけません。
※一定の要件を満たす宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで継続8時間以上とすることができます。
- 運転時間
2日を平均して1日あたりの運転時間は9時間以内、2週を平均して1週あたりの運転時間は44時間以内です。
- 連続運転時間
連続運転時間は4時間以内です。
運転開始後4時間以内、または4時間を経過した直後に、30分以上は運転を中断する必要があります。
中断は、原則として休憩を与えなければいけません。
運転の中断は、1回がおおむね連続10分以上としたうえで分割することもできます。
1回が10分未満の運転の中断は、3回以上連続してはいけません。
- 休日と休日労働の回数
休日は、休息期間に24時間を足した連続した時間を指します。
休息期間に24時間を足した時間(=休日)はどんな場合でも30時間を下回ってはいけません。
なお、休息期間は11時間が基本で9時間を下回ってはいけないので、
通常勤務の場合は継続33時間(24時間+9時間)を下回ることのないようにする必要があります。
休日労働は2週間に1回が限度で、休日労働によって拘束時間の上限を超えないようにする必要があります。
その他、車両の故障など予期しえない事象や、分割休憩・2人乗務・隔日勤務・フェリーの場合の特例などが定められています。
タクシー・ハイヤー運転者
≪日勤の場合≫
- 1カ月の拘束時間
日勤勤務者の1か月の拘束時間は288時間以内です。
- 1日の拘束時間
1日(始業時刻から24時間)の拘束時間は13時間以内とし、延長する場合でも上限は15時間です。
延長する回数は週3回までが目安です。
13時間を超えて延長する場合は、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努めなければいけません。
また、14時間を超える日が連続することは望ましくありません。
- 1日の休息期間
勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回ってはいけません。
≪隔日勤務の場合≫
隔日勤務とは、始業と終業の時刻が同じ日にない業務をいいます。
深夜時間帯を含む2労働日の勤務を1勤務にまとめて行うもので、都市部を中心に広く採用されています。
- 1カ月の拘束時間
隔日勤務者の1か月の拘束時間は262時間以内です。
※地域的その他特別な事情がある場合、労使協定により1年のうち6カ月までは1か月の拘束時間を270時間まで延長することができます。
- 2暦日の拘束時間
22時間以内、かつ、2回の隔日勤務を平均して1回あたり21時間以内です。
- 2暦日の休息期間
勤務終了後、継続24時間以上与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回ってはいけません。
また、日勤勤務と隔日勤務を併用して頻繁に勤務態様を変えることは、労働者の生理的機能への影響を鑑みて認められません。
その他、車両の故障など予期しえない事象についての特例や、車庫待ち等の自動車運転者についての定め、累進歩合制度の廃止やハイヤーについての36協定のルール、 休日労働は2週間に1回が限度などが定められています。
バス運転者
- 「1年・1カ月」または「52週・4週平均1週」
どちらかを選択します。
「1年・1カ月」の基準 | 1年の拘束時間は3,300時間以内 かつ 1カ月の拘束時間は281時間以内 ※貸切バス等乗務者の場合は例外の規定があります。 |
「52週・4週平均1週」の基準 | 52週の拘束時間は3,300時間以内 かつ 4週を平均した1週あたりの拘束時間は65時間以内 ※貸切バス等乗務者の場合は例外の規定があります。 |
- 1日の拘束時間
1日の拘束時間は13時間以内とし、延長する場合でも上限は15時間です。
延長する回数は週3回までが目安です。
13時間を超えて延長する場合は、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努めなければいけません。
また、14時間を超える日が連続することは望ましくありません。
- 1日の休息期間
勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回ってはいけません。
- 運転時間
2日を平均した1日あたりの運転時間は9時間以内、
4週間を平均した1週間あたりの運転時間は40時間以内です。
※貸切バス等乗務者の場合の例外があります。
- 連続運転時間
連続運転時間は4時間以内です。
運転開始後4時間以内、または4時間経過直後に、30分以上は運転を中断して休憩等を確保しなければいけません。
運転の中断は、1回がおおむね連続10分以上としたうえで分割することもできます。
※高速バス・貸切バスの高速道路の実車運行区間の連続運転時間は、おおむね2時間までとするよう努める必要があります。
- 休日労働
休日労働は2週間に1回が限度で、休日労働によって拘束時間の上限を超えないようにする必要があります。
その他、車両の故障など予期しえない事象や、分割休憩、2人乗務、隔日勤務、フェリーの場合の特例などが定められています。
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