以前は、親の介護は子どもや家族が各家庭の中で行うことが一般的でした。
しかし、高齢者の増加や核家族の増加で介護による離職が社会問題となったため、家族の負担を軽減し、社会全体で介護を支えることを目的に2000年に介護保険制度が創設されました。
介護保険法では、総則で目的を次のように定めています。
介護保険法
(目的)
第一条
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
介護保険を受けられる人(被保険者)
介護保険を受けられる人(被保険者)は次のとおりです。
第2号被保険者 | 40歳から64歳まで | 『加齢に伴う特定疾病』が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。 |
第1号被保険者 | 65歳以上 | 『要介護認定』または『要支援認定』を受けたときに介護サービスを受けることができます。 介護認定等を受けるようになった原因は何でもOKです。 |
特定疾病とは
65歳以上の高齢者に多く起きている加齢との関係が認められる疾病で、3~6ヶ月以上継続して『要介護状態』または『要支援状態』となる場合が多いもの。
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険料を納付する人
介護保険料を納付する人(被保険者)は次のとおりです。
第2号 被保険者 | 40歳から64歳まで | 【40歳の誕生日の前日が属する月】から【65歳の誕生日の前日が属する月の前月】まで納付します。 健康保険料と一緒に介護保険料を納めるので、勤め先で健康保険に加入している場合は給与から天引きされます。 |
第1号 被保険者 | 65歳以上 | 【65歳の誕生日の前日が属する月】から納付します。 市町村と特別区に納めますが、原則として年金から天引きされます。 |
65歳になったら気を付けるポイント
高年齢者雇用安定法で「70 歳までの定年の引上げ」など70歳までの就業機会の確保が努力義務とされたので、65歳以降の方を雇用する機会も増えてきたと思います。
65歳以降の社会保険の取り扱いで気を付けるポイントは次のとおりです。
介護保険料 | 勤め先で給与から天引きするのは【65歳の誕生日の前日が属する月の前月】までの分です。 【65歳の誕生日の前日が属する月】からは、本人が直接、市町村等に納めるようになります。 |
健康保険料 | 65歳以降も引き続き給与から天引きします。 健康保険は【75歳になる誕生日の前日】まで勤め先で加入できます。 |
厚生年金保険料 | 原則として【70歳に到達する誕生日の前日】に資格を喪失します。 70歳以上も雇用を続ける場合は70歳以上被用者該当の届出が必要ですが、保険料は徴収されず、年金額にも反映されません。 また、70歳以上の方も一定の要件を満たした場合、申出することで厚生年金保険に高齢任意加入をすることもできます。 |
また、60歳以上の人を退職後1日もあけずに再雇用したとき、就業規則等を添えて資格の喪失と取得を年金事務所に同時に届け出をすることで、標準報酬月額を再雇用された月から変更することができます。
再雇用後は給与が下がる場合が多いと思いますが、届出をすることで再雇用した月から下がった給与に応じた社会保険料となります。