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【労務管理】懲戒処分について

従業員が企業秩序を乱すなどの違反行為をした場合、制裁として『懲戒処分』をすることができます。

懲戒処分は就業規則に則って行う必要があるため、就業規則に懲戒内容をあらかじめ規定して周知しておく必要があります。

  • 就業規則に懲戒規定を設けていないときにした労働者の行為に対して、さかのぼって懲戒処分をすることはできません。
  • 1回の懲戒事由に該当する行為に対しては1回しか懲戒処分を行うことはできません。
  • 制裁の種類及び程度に関する事項は、就業規則の相対的必要記載事項です。
    (相対的必要記載事項⇒定める場合には必ず記載しなければいけない事項のこと)

懲戒処分の種類

懲戒処分は主に5種類あります。

  1. 戒告・けん責
    懲戒処分の種類の中では一番軽い処分です。
    戒告(かいこく)は将来を戒める処分のことで、口頭注意や文書による注意です。始末書の提出は求めません。
    けん責(けんせき)とは始末書を提出させて将来を戒める処分をいいます。

  2. 減給
    賃金から一定額を控除する処分です。
    労働基準法第91条で、減給できる額は1回の額が平均賃金の1日分の半額以内、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1以内と定められています。
    「総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1以内」というのは、一賃金支払期の中で何回も減給する事案が起きても、減給の合計額はその一賃金支払期に支払われる賃金総額の10分の1までという意味です。
    控除しきれなかった分を翌月以降に繰り越すことは認められます。

    労働基準法で定められた範囲内で就業規則に減給の計算方法を定め、規則に従って減給をします。

  3. 出勤停止
    一定期間の出勤を停止し、その間の賃金は支給しないという処分です。
    あまりにも長期の出勤停止となると労働者が生活に困るため、行政指導として7日以内が目安になっています。

  4. 諭旨退職
    本来は懲戒解雇にするところ、本人が反省していることなどを理由として懲戒解雇を猶予し、自主的に退職願を提出するよう勧告する処分です。

  5. 懲戒解雇
    一番重い処分です。
    所轄労働基準監督署長の認定を受けると解雇予告手当を支給しないことが認められます。

    解雇にあたっては解雇権濫用法理(使用者による労働者の解雇は、合理的理由を欠き、社会通念上相当性を欠く場合には解雇権の濫用として許されないとする理論)に気を付けることはもちろん、事実調査、本人に弁明の機会を与えること、懲戒解雇の通知が必要となり、特に慎重に進める必要があります。

懲戒事由

懲戒事由については、労働基準法に決まりはありません。

労働契約法では次のように定められています。

(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

e-Gov 労働契約法 より
  • 懲戒をしようとする労働者の行為の「性質」及び「態様」「その他の事情」をみて
  • 客観的に合理的な理由があるか
  • 社会通念上相当であるか

を検討する必要があります。

そして、いずれの懲戒処分をする場合も、就業規則に記載されている理由に則って適切な程度で処分をすることが求められます。
就業規則に記載されていない理由で処分をすることは懲戒権の濫用となってしまいます。

※最高裁判決(国鉄札幌運転区事件 最高裁第3小法廷判決昭和54年10月30日)において、使用者は規則や指示・命令に違反する労働者に対しては、「規則の定めるところ」により懲戒処分をなし得ると述べられています。

また、規律違反の程度に応じて、過去の同じような事例のときの処分内容等を考慮して公正な処分を行う必要もあります。

労働者が遅刻や早退をした場合の賃金控除

労働者が遅刻や早退をした場合で、その時間について給与を支給しないことは減給の処分になりません。
(働いていない分については賃金債権が生じないため)

しかし、 働いていない分を超えて賃金を支給をしないような場合は減給の制裁とみなされます。
たとえば15分遅刻したことに対して1時間の賃金を支給しないような社内ルールになっている場合、減給の制裁をしていることになりますので注意してください。

 

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