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【労務管理】歩合給の残業代計算

時間外労働をしたときの割増賃金

労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、労働基準法で定める割増賃金を支払わなければいけません。

月給、時給、歩合など賃金形態に関わらず、時給単価に対して次の割増率を支払う必要があります。

割増賃金の種類と割増率

名称内容割増率
時間外手当
(いわゆる残業代)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
※1カ月60時間を超えたときは50%以上
休日手当法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上
深夜手当22時から朝5時までの間に勤務させたとき25%以上

歩合給制の残業代

歩合給制は「出来高払制」や「請負給制」ともいわれるもので、

「売上に対して〇%」

「成果物1件に対して〇円」

といった一定の“成果”に対して定められた金額を支払う賃金制度です。

歩合給制であっても法定労働時間を超えて労働した場合は、その部分について割増賃金を支払う必要があります。

歩合給制の場合、時間外の計算方法は労働基準法施行規則で次のように定められています。

歩合給 ÷ その月のトータルの労働時間数(所定労働時間数+時間外数)=割増基礎単価

割増基礎単価×0.25×時間外数=割増賃金額  ※休日手当の場合は×0.35

労働基準法施行規則 
第十九条 一~五 (略)
六  出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締 切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額

昭和二十二年厚生省令第二十三号 労働基準法施行規則

個別あっせんの事例

中央労働委員会のHPで、歩合給に関する事例と解説が掲載されていました。
※中央労働委員会=労働組合法に基づいて設置された国の機関で、あっせん・調停・仲裁など労働争議の調整などを行っているところ

争点は次の2点です。

  1. 委任契約だが、実態としては労働者なのか
  2. 歩合給の中に残業代は支払われているのか

1については、当事件においては実態として労働基準法上の労働者性があるということで話が進められました。
残業代計算の内容とは少しずれますが、労働者性を判断する解説がわかりやすいので引用でご紹介します。

(読みやすいよう任意で改行しています)

労働者か否かは、契約の形式ではなく労働関係の実態で判断する

゛証券会社や保険会社の外務員、カスタマー・エンジニア、芸能員、在宅勤務者(速記、ワープロなど)等々の契約の中には「雇用」ではなく、「委任」または「請負」契約の形式がとられ、そこでは、報酬は少額の保障部分があるほかは成績に比例して支払われ(歩合制、出来高払)、労働時間や労働場所についての拘束が少なく、就業規則の適用が排除され、労働保険にも入られない、という取り扱いがなされることが少なくない。

また、建設業における一人親方の職人、自己所有のトラック持込みで特定企業の運送業務に従事する傭車運転手、フランチャイズ店の店長なども個人事業主として「請負」または「委任」契約の取扱いを受けることが多いが、
特定企業のために専属的に労働力を提供する実質を有する場合には、「労働者」か否かが問題となる。

このような請負・委任契約による労務供給者が「労働者」か否かは、契約の形式(文言)によって決められるのではなく、労働関係の実態において事業に「使用され」かつ賃金を支払われている労働関係(労働契約関係)と認められれば、「労働者」といえる。 

(中略)
判断要素としては、昭和60年の労働省労働基準法研究会報告が、
①仕事の依頼への諾否の自由、
②業務遂行上の指揮監督、
③時間的・場所的拘束性、
④代替性、
⑤報酬の算定・支払い方法を主要な判断要素とし、
また、
①機械・器具の負担、報酬額等に現れた事業者性、
②専属性等
を補足的な判断要素として判断することを提唱し、以後、これらの要素が用いられている。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

1において労働者であることが前提となったため、「2.歩合給の中に残業代は支払われているのか」 については歩合給の割増計算に則って支払う方向であっせんを進めて話がまとまったようです。

通常の労働時間にあたる部分と割増賃金にあたる部分を分けていない場合、割増賃金が支払われたとは言えない

また、歩合給の残業代の支払いについて、最高裁判例の紹介がされていたので、こちらも引用でご紹介します。

゛タクシー会社の乗務員に支払われる歩合給に関し、
時間外・深夜労働が行われたとしても金額が増加せず、また、歩合給のうちで
通常の労働時間にあたる部分と
時間外・深夜の割増賃金にあたる部分とを判別することができない場合には、
当該歩合給の支給により時間外・深夜労働の割増賃金が支払われたものとすることはできず、
使用者は割増賃金規定に従って計算した割増賃金を別途支払う義務を負う、としたものがある
(高知観光事件-最二小判平6・6・13労判653号12頁、徳島南海タクシー事件-最三小決平11・12・13労判775号14頁)。”

引用元:[1] 労働基準法上の労働者性、歩合給の場合の割増賃金

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