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【労務管理】令和7年6月からの職場における熱中症対策

労働安全衛生規則の一部が改正され、令和7年6月1日から熱中症のおそれがある作業を行う場合は次の対策が義務付けられます。

  • 早期発見のための体制整備
  • 熱中症による重篤化を防止するための措置・手順を作成
  • 関係作業者への周知

近年、気候変動の影響で熱中症による死亡災害が起きていますが、熱中症は死亡災害に至る割合が他の災害の約5~6倍もあり、早急に適切な対策をすることが求められています。

熱中症対策が必要になる作業

熱中症対策が必要になる作業は、暑熱な場所で連続して行われる作業など、熱中症が生じるおそれのある作業です。具体的には、

WBGT28度  または  気温31度以上の作業場 において行われる作業で、

継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。

作業強度や着衣の状況によっては上記に該当しなくても熱中症のリスクが高まるので、同じような対策が推奨されます。

WBGTとは

WBGTは、『厚さ指数』と言われるもので、人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱」の3つを取り入れた温度の指標です。

WBGTは熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案され、日本では環境省が運営する『熱中症予防情報サイト』で情報発信されています。

熱中症予防情報サイトでは、無料で予測値や実況値等をお知らせする『暑さ指数(WBGT)メール配信サービス』もあり、令和7年度は4月23日(水)から10月22日(水)まで実施される予定のようです。

  • 厚さ指数(WGBT)は28を超えると熱中症患者発生数が急増するとされています。
  • 熱中症警戒アラートは、厚さ指数(WGBT)が33以上になると予測される地点があるときに発表されています。

早期発見のための体制整備

「熱中症の自覚症状がある作業者本人」や「熱中症の疑いがある人を見つけた他の作業者」が、その旨の報告をするための連絡体制等を整備し、体制を周知する必要があります。

どのような順番で、誰がどこに連絡するのか、緊急搬送先の連絡先や所在地等をまとめて周知します。

※本資料は、熱中症対策に関する連絡体制の一例として作成したものであり、すべての状況において適用可能であることを保証するものではありません。実際の運用にあたっては、各事業所の実情や関係法令に基づき、内容をご確認・ご調整のうえご利用ください。
本資料の利用により生じた損害等について、当方は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

熱中症による重篤化を防止するための措置・手順を作成

作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送など、熱中症による重篤化を防止するために必要な措置を実施するための手順を作成します。

熱中症のおそれのある者に対する処置の例が厚生労働省のサイト内にあるので、事業場ごとにフロー図を作成する際の参考にできます。

熱中症のおそれのある者に対する処置の例フロー図①
厚生労働省 職場における熱中症対策の強化についてより

体制や手順の周知

作成した連絡体制や手順は関係作業者に周知します。

手順や連絡体制の周知の一例
厚生労働省 職場における熱中症対策の強化についてより

【労務管理】試用期間とは

試用期間は、雇い入れ後、労働者を本採用するか見極めるための期間です。

「試の使用期間中の者」とは、本採用決定前の試験的使用期間中の労働者であって、その期間中に勤務態度、能力、技能、技能、性格等を見て正式に採用するか否かが決定されるものである。
一般には、本採用に適しないと判断されたときはその期間中といえども解雇し得るように、解約権が本採用者に比して広範に留保されており、その期間中の賃金その他の労働条件も低く定められている。

労務行政研究所編「実務コンメンタール 労働基準法・労働契約法」より

試用期間は必ず設けなければいけないものではありません。
必要に応じて、就業規則や雇用契約に試用期間を定めます。

  • 試用期間を設ける場合は、就業規則や労働条件通知書に期間や試用期間の労働条件を明確に定めます。
  • 試用期間の長さに関する法律上の決まりはありませんが、1カ月~6カ月程度が多いようです。
  • 合理的な理由もなくあまりにも長期間を試用期間とすると、公序良俗違反とされる可能性があります。
  • 試用期間を延長する場合は、労働者を不安定な地位に置くことになるので、きちんとした根拠や合理的な理由が必要です。
  • 就業規則に延長の可能性や延長する事由、期間、回数等について定めておくと良いですが、定めていない場合は労働者本人に合意をとるなど、延長にあたって丁寧な説明をすることが求められます。

試用期間は、正社員だけでなく、アルバイトやパート、契約期間の定めがある有期契約社員にも設けられる場合があります。

試用期間中の解雇

労働基準法21条では「試用期間中の者を入社から14日以内に解雇する場合には、解雇予告手当の支払いは必要ない」としています。

※解雇予告手当とは
労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければいけません。
30日前に予告をしない場合は、30日よりも少ない日数分の平均賃金を支払う必要があります。この手当のことを解雇予告手当といいます。

解雇予告手当の必要がないのは入社から14日以内の試用期間中の者ですので、入社から15日以降の試用期間は通常どおり解雇予告手当が必要になります。

また、試用期間中や試用期間が終わって本採用をしないことによる解雇は、正社員の解雇より幅広く認められるとされていますが、試用期間中であればきちんとした理由もなく簡単に解雇できるわけではありません。


本採用を拒否する理由として、その人物に応じた客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として認められる必要があります。
日々の丁寧な指導や面談、改善の機会を与えることなどが求められます。

有期契約社員の試用期間

有期契約社員にも試用期間が設けられることは珍しくありませんが、労働契約法第17条では、「期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」としています。

労働契約法 第17条(契約期間中の解雇等)

使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

労働契約法の関連通達(基発0810第2号)によると、「やむを得ない事由」があるかどうかは個別の具体的な事案に応じて判断されるものの、契約期間は労働者と使用者が合意により決定したものなので、遵守されるべきであるとしています。


「やむを得ない事由」は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」よりも厳しく判断されます。

正社員など期間の定めのない労働契約をしている社員を解雇するときよりも、期間の定めがある労働契約をしている有期契約社員を契約期間中に解雇することは難しいです。

そのため、有期契約社員に試用期間を設ける場合、本採用拒否をすることは期間の定めがない労働者よりもハードルが高いことに留意が必要です。

【労務管理】65歳以降の介護保険料、医療費の自己負担割合と在職老齢年金制度

65歳以降の介護保険料、医療費の自己負担割合、在職老齢年金制度についてまとめてみます。

介護保険料

40歳から64歳まで

40歳から64歳までは、介護保険第2被保険者として、健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。
勤務先で社会保険に加入している場合、40歳から64歳までは給与から天引きされて支払うかたちになっています。

65歳以降

65歳以降は介護保険第1号被保険者となるので、勤務先から給与を支払われる場合でも、65歳以降は給与から天引きされなくなり、個人で介護保険料を市区町村へ納めるようになります。
原則として年金から天引きされますが、年金受給額が一定額未満等の場合は納付書で支払ったり口座振替をしたりするようになります。

医療費の自己負担割合

病院等を受診したときに支払う医療費の自己負担割合は、年齢によって次のように定められています。(令和7年3月1日時点)

6歳(義務教育就学前)未満自己負担割合2割
70歳未満自己負担割合3割
70歳から74歳自己負担割合2割、ただし現役並み所得者は3割。
75歳以上自己負担割合1割。
ただし、現役並み所得者以外の一定所得以上の人は2割。現役並み所得者は3割。
70歳から74歳の間

70歳から74歳の間の医療費の自己負担割合は、所得に応じて2つに別れています。

勤務先で健康保険に加入している場合

  • 標準報酬月額が28万円未満の方は、自己負担割合2割※
  • 標準報酬月額が28万円以上の方は、自己負担割合3割

※誕生日が昭和19年4月1日生まれ以前の場合の一部負担金等の軽減特例措置があります。

標準報酬月額というのは、勤務先で支払う社会保険料の基礎となる金額です。入社して初めて社会保険に加入した時や毎年の標準報酬決定の時などに勤務先から通知されます。

国保の場合

原則として住民税課税所得145万円以上の場合、3割負担になります。

※収入合計額による例外もあります。

また、3割負担に該当する場合、医療費が高額になった場合の上限額(高額療養費の自己負担限度額)が標準報酬月額や課税所得によって3つに分かれます。

画像は厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」より

75歳以上

75歳以上になると、医療費の自己負担割合は所得に応じて3つに別れます。

現役並み所得者住民税課税所得145万円以上
※収入合計額や生年月日による例外もあります。
自己負担割合3割
一定以上所得者住民税課税所得が28万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、後期高齢者が2人以上の場合計320万円以上自己負担割合 2割
※2割負担の場合、令和7年9月30日までは1か月の外来医療費の配慮措置があります。
一般住民税課税所得28万円未満(「一定以上所得」以外)自己負担割合 1割

3割負担に該当した場合、医療費が高額になった場合の上限額(高額療養費の自己負担限度額)は課税所得額によって3つに分かれます。

画像は兵庫県後期高齢者医療広域連合「後期高齢者医療制度のご案内」より

在職老齢年金(給与と老齢年金の調整)

老齢厚生年金は、受給権がある方は原則として65歳から受給できます。

老齢厚生年金を受給しながら働いている方が勤務先で厚生年金保険に加入している場合、給料と年金の合計額に応じて年金の支給額が調整される場合があります。

老齢厚生年金の「基本月額」と
「総報酬月額相当額」の合計が
「50万円」以下の場合
全額支給
老齢厚生年金の「基本月額」と
「総報酬月額相当額」の合計が
「50万円」を超える場合
次の計算式によって調整された額が支給されます。
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
  • 50万円は、令和6年度の支給停止調整額です。
  • 「基本月額」は、配偶者や子どもなどを扶養している場合に追加される「加給年金額」を除いた老齢厚生年金の報酬比例部分の月額です。
  • 「総報酬月額相当額」は、おおざっぱにいうと、その月以前1年間の年収を12で割った額のようなものです。具体的には、勤務先の標準報酬月額に、その月以前1年間に支払われた標準賞与合計額を12で割った金額を加えたものです。

その他、厚生年金基金に加入していた期間がある場合など別途細かい計算のルールが定められています。

支給額が調整されている場合は、「総報酬月額相当額が変わった月」や「退職日の翌月」に調整額の見直しとなります。退職して1カ月以内に再就職して厚生年金保険に加入した場合は調整額の見直しがされません。

【労務管理】ストレスチェックが全ての事業場で義務化の方針が決定

こころの耳 でメンタルヘルス対策を参考に

厚生労働省は、これまでは努力義務であった従業員数が50人未満の小規模事業所に対しても、働く人の「ストレスチェック」を義務化する方針を決定しました。
具体的にいつから義務化されるかについては協議、検討が行われていきます。

全ての事業場でストレスチェックを行う必要が出てきた理由として、メンタルヘルス不調による患者が急速に増加していることが考えられます。最近は弊社でもメンタルヘルス不調の方が本当に増えたと実感しています。弊社の顧問先会社からも毎月のように「従業員が精神的な病で出勤できなくなった」とご相談を受けるようになりました。

厚生労働省のストレスチェック、メンタルヘルス対策のページで【こころの耳】というサイトがあります。

「こころの耳」は、働く方やそのご家族、職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者の方などに向けて、メンタルヘルスケアに関するさまざまな情報や相談窓口を提供している、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトです。

事業者向けにストレスチェック制度への対応、メンタルヘルス対策についや、働く労働者の方向けには、5分で出来るセルフストレスチェック、5分研修シリーズとして、働く労働者の方向けに「しんどいときに職場ですぐできるセルフケア」など短い時間の動画などがあり事業者側、働く労働者の方側にも有益なサイトとなっています。
メンタルヘルス不調を起こす原因は様々ですが、事業者の方はその対策や予防について、働く方は自身のストレスチェックやストレスを溜めない方法などについてご参考になると思います。

【労務管理】再就職援助計画とは

再就職援助計画とは

事業の縮小等で、一定期間内に相当数の労働者の離職が見込まれる場合、事業主は、離職する労働者に対して再就職の援助に努める義務があります。
事業主は最初の離職者が生じる日の1か月前までに「再就職援助計画」を作成してハローワークに提出し、認定を受けなければいけません。

政府は、認定された再就職援助計画に基づいて、労働者の再就職の促進のための取り組みをする事業主に対して必要な助成や援助を行います。また、該当する労働者の再就職の促進にも努めます。

再就職援助計画を作成しなければいけない場合

経済的な事情によって、『1つの事業所』で『1カ月に30人以上の離職者を生じさせる事業規模の縮小等』をしようとする場合に、再就職援助計画を作成する必要があります。
また、離職者が1か月に30人未満の場合にも、任意で再就職援助計画を作成することができます。

事業規模の縮小の理由には、事業の全部の廃止のほか、事業規模・事業活動の縮小や、事業の転換・再編が含まれます。

再就職援助計画に記載する内容

再就職援助計画に記載する内容は次のような内容です

  1. 事業の現状(事業所数や常時雇用する労働者数など)
  2. 再就職援助計画作成に至る経緯(具体的な理由)
  3. 計画対象労働者の氏名
  4. 再就職援助のための措置(労働者の再就職を援助するために事業主が何をするか)
  5. 労働組合等の意見

再就職援助計画対象労働者証明書

事業主が再就職援助計画の認定を受けると、ハローワークから対象労働者ごとに「再就職援助計画対象労働者証明書」が発行されます。
さらに、再就職援助計画の認定を受けた事業主が中小企業再生支援協議会等による事業再生・再構築・転廃業の支援を受けている等の一定の要件に該当する場合、ハローワークでは「再就職援助計画対象労働者証明書」に「特例対象者」としての記載をします。

「特例対象者」を雇い入れることは、雇い入れた再就職先の事業主が「早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)」を申請する場合に優遇助成を受けられる要件になります。そのため、特例対象者について就職促進が図られることになります。

再就職支援を行う事業主への支援策

再就職支援を行う事業主への支援策は次のようなものがあります。

  • 2025.2月時点の内容です。
  • 令和6年4月1日以降に提出された再就職援助計画等の対象者を雇い入れた場合。

早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)

再就職援助計画を作成した事業主が、対象となった従業員に対して再就職の支援を行う場合に助成されます。

(1)再就職支援

離職する労働者の再就職支援を職業紹介事業者に委託し、一定期間内に再就職させた場合に、委託費用の4分の1~5分の4が助成されます。

さらに、再就職支援の一部として訓練を実施した場合の上乗せ(訓練加算として訓練実施にかかる委託費用×2/3の額。上限10万~50万円)や、再就職支援の一部としてグループワークを実施した場合の上乗せ(グループワーク加算として3回以上実施で1万円)があります。

1事業所につき1年度500人が上限です。

画像は厚生労働省HPより
(2)休暇付与支援

離職することが決まっている労働者に求職活動のための休暇を与えた場合、休暇1日当たり5,000円(中小企業の場合は8,000円)が助成されます。上限180日分。

さらに、対象者が離職の日の翌日から1か月以内に再就職できた場合、1人につき10万円が加算されます。

(3)職業訓練実施支援

再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施する場合、訓練実施にかかる委託費用の4分の3が助成されます。上限額10万~50万円。
賃金助成は1時間あたり960円(中小企業以外は480円)です。

※助成金の申請にはその他細かい要件があります。事前によく要件をご確認ください。

早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)

再就職援助計画の対象者等を、離職後3か月以内に期間の定めのない労働者として新たに雇い入れ、前の賃金よりも5%以上上昇させた事業主に助成されます。

早期雇入れ支援
  • 通常助成・・・支給対象者1人につき30万円が支給されます。
  • 優遇助成・・・「特例対象者」を雇い入れた場合、支給対象者1人につき40万円が支給されます。
人材育成支援

早期雇い入れ助成の対象者に、雇い入れ日から6か月以内にOFF-JTやOJTの訓練をした場合、次の額の賃金助成や経費助成が上乗せされます。

画像は厚生労働省HPより

※助成金の申請にはその他細かい要件があります。事前によくご確認ください。

出向・移籍のマッチング支援(公益財団法人産業雇用安定センター)

公益財団法人産業雇用安定センターで、事業主に対する出向・移籍に関する相談・マッチングなどの支援や、雇用調整の対象となった従業員にキャリアコンサルティングやアドバイスを行って貰えます。センターの利用は無料です。

【労務管理】退職や解雇についての証明書

退職証明書

労働者が退職する場合で、労働者から次の内容の証明書を求められたときは、使用者は遅滞なく「退職証明書」を作成して交付しなければいけません。

  • 使用期間
  • 業務の種類
  • その事業における地位
  • 賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)

なお、労働者の請求しない事項は記入してはいけません。

※ひな形のご利用は、利用者自身の責任において行ってください。ひな形のご利用により生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いません。

解雇理由証明書

労働者を解雇する場合で、解雇予告日から退職までの間に労働者から『解雇の理由』について証明書を求められたときは、使用者は遅滞なく「解雇理由証明書」を作成して交付しなければいけません。


なお、退職日以降に解雇の理由について証明を求められた場合は、退職証明書を交付します。


また、解雇を予告した日以降に、労働者が解雇ではない理由で退職した場合には、その労働者の退職日以降は解雇理由証明書を発行する必要はありません。

※ひな形のご利用は、利用者自身の責任において行ってください。ひな形のご利用により生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いません。


※労働者の請求しない事項は記入してはいけません。
※解雇理由証明書は、解雇の有効性を判断する上で重要な証拠となります。慎重に作成してください。
※解雇の理由は客観的に合理的で、社会通念上相当であると認められる必要があります。

解雇通知書

解雇は口頭で伝えることもできますが、労働者に正しく伝わらないことによるトラブルを避けるためにも、文書で伝えることをお勧めします。

なお、労働者を解雇しようとする場合は、少くとも解雇日の30日前までに予告をしなければいけません。
30日前に予告をしない場合は、30日よりも少ない日数分の平均賃金(解雇予告手当)を解雇する日までに支払う必要があります。
ただし、火災や震災などの自然災害によってどうしても事業の継続ができなくなった場合や労働者の重大または悪質な行為で解雇する場合で労働基準監督署から解雇予告除外認定を受けたときは、解雇予告手当を支払う必要がありません。

 

※ひな形のご利用は、利用者自身の責任において行ってください。ひな形のご利用により生じたいかなる損害についても、一切の責任を負いません。

【労務管理】2025年4月からの育児休業給付について

育児休業給付は、『雇用保険に加入している一定の要件を満たした労働者』が育児休業をした場合に支給される給付金です。

育児休業給付には、次の4種類の給付金があり、2025年4月から新しく始まる給付金が2種類あります。

  • 出生時育児休業給付金
  • 出生後休業支援給付金(2025年4月1日から)
  • 育児休業給付金
  • 育児時短就業給付金(2025年4月1日から)
画像は厚生労働省パンフレット「育児休業等給付の内容と支給申請手続」より

出生時育児休業給付金とは

出生時育児休業給付金は、原則として男性が育児休業を取得した場合に支給される給付金です。
(女性が出生時育児休業給付金を受給できるのは、養子の場合に限られます。)

主な支給要件は次のとおりです。

  • 子の誕生日からおおよそ8週間の期間内※に、4週間(28日)以内の期間を定めて産後パパ育休を取得する。2回まで分割可。
  • 休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または80時間以上)の月が12か月以上ある。
  • 休業期間中の就業日数が、最大10日以下、10日を超える場合は就業した時間数が80時間以下である。
  • 有期雇用契約の労働者の場合は、一定の定められた期間までに契約期間が終わることが明らかでない。

※正確には「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間内。

出生後休業支援給付金とは(2025年4月1日~)

出生後休業支援給付金は、2025年4月1日から新しく始まる給付金です。

一定の要件を満たした場合に「出生時育児休業給付金」や「育児休業給付金」に上乗せされて支給されます。

 

「出生後休業支援給付金」が「出生時育児休業給付金」に上乗せされる場合
  • 出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休を通算して14日以上取得すること。
  • 配偶者が子の誕生日の翌日に産後休業中であるなど、一定の要件に該当していること。
「出生後休業支援給付金」が「育児休業給付金」に上乗せされる場合
  • 育児休業給付金が支給される育児休業を対象期間に通算して14日以上取得すること。
  • 配偶者が子の誕生日の翌日に産後休業中であるなど、一定の要件に該当していること。

「出生時育児休業給付金」と「出生後休業支援給付金」の支給額

「出生時育児休業給付金」支給額は、休業を開始したときの賃金日額の67%で、「出生後休業支援給付金」が休業を開始したときの賃金日額の13%です。合わせて80%が支給されるようになります。

出生時育児休業給付金の支給額休業開始時賃金日額×休業日数(28日が上限)×67%
出生後休業支援給付金の支給額休業開始時賃金日額×休業日数(28日が上限)×13%

「休業開始時賃金日額」とは、出生時育児休業または育児休業を開始する前の、直近6か月間に支払われた賃金総額を180で割った額です。賃金支払基礎日数が11日未満の賃金月は除いて計算されるなどの一定の計算方法や、上限額と下限額などが定められています。

なお、育児休業等給付は非課税で、さらに育児休業中は申出により健康保険・厚生年金保険料が免除されるため、休業開始時賃金日額の80%給付は手取り10割相当となります。

ただし、休業開始時賃金日額に上限額があるので、すべての人が手取り10割相当になるわけではありません。また、出生時育児休業期間に事業主から賃金が支払われた場合は給付金が減額される場合があります。

育児休業給付金

育児休業給付金は、原則として1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した労働者に支給される給付金です。

支給要件は主に次のとおりです。

  • 1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得する。2回まで分割可。
  • 休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または80時間以上)の月が12か月以上ある。
  • 支給単位となっている期間中に就業した日数が10日以下、10日を超える場合は就業した時間数が80時間以下である。
  • 有期雇用契約の労働者の場合は、一定の定められた期間までに契約期間が終わることが明らかでない。

労働者が子の母の場合、産後休業期間である子の誕生日の翌日から8週間は育児休業給付金の対象外です。ただし、産後休業期間は、育児休業給付金とは別に、勤務先の健康保険に加入していれば出産手当金が支給されます。国保の場合は出産手当金はありません。

また、 育児休業給付金が支給される期間は、原則として子が1歳の誕生日の前々日までですが、パパ・ママ育休プラス制度を利用する場合は子が1歳2か月、さらに保育所に入れない等の事情がある場合は子が1歳6か月、そして2歳になるまで、それぞれ延長できる制度になっています。

パパ・ママ育休プラス制度とは

父母ともに育児休業を取得する場合で、一定の要件を満たすと子が1歳2か月までの間に最大1年育児休業給付金が支給されます。母親の場合は、出産日(産前休業の末日)と産後休業期間と育児休業期間を合わせて最大1年、父親の場合は、出生時育児休業期間と育児休業期間を合わせて最大1年の期間となります。

「育児休業給付金」と「出生後休業支援給付金」の支給額

育児休業開始から180日目までの育児休業給付金の支給額
※出生時育児休業給付金の支給日数は、上限日数の180日に通算されます
休業開始時賃金日額×支給日数×67%
育児休業開始から181日目以降の育児休業給付金の支給額 休業開始時賃金日額×支給日数×50%
出生後休業支援給付金の支給額休業開始時賃金日額×休業日数×13%
※28日が上限。ただし、産後パパ育休で出生後休業支援給付金が支給されている場合などは、支給済日数分を差し引いた日数が上限。
※育児休業期間に事業主から賃金が支払われた場合は給付金が減額される場合があります。

育児時短就業給付金

令和7年4月1日から、労働者が2歳未満の子を養育するため所定労働時間を短くして働く場合、賃金が低下するなど一定の要件を満たすと「育児時短就業給付金」の支給を受けることができます。

給付率は、時短勤務中に支払われた賃金額の10%です。

こちらは厚生労働省から詳細パンフレットがまだ公開されていないので、詳細はまた別の機会にまとめたいと思います。

【労務管理】2025年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が変わります

高年齢雇用継続給付とは

雇用継続給付は、職業生活の円滑な継続を援助・促進することを目的としたものです。

高年齢雇用継続給付は、60歳になった時等に比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働く60歳以上65歳未満の一定の雇用保険被保険者に支給されます。

高年齢雇用継続給付のなりたち

平成6年に定年年齢が60歳に義務化され、平成10年に施行されました。
また、老齢厚生年金の支給開始年齢は平成13年度から60歳から65歳まで段階的に引上げになっています。


それらを背景に、高年齢雇用継続給付は平成7年4月に創設されましたが、65歳までの雇用確保の義務や70歳までの定年引上げ・定年廃止などが努力目標として設けられ、高年齢者の雇用を確保する環境が進展していることで給付率の見直しが進められています。

2025年4月1日からの支給率

60歳の誕生日の前日※が令和7年3月31日以前各月に支払われた賃金の0~15%が支給されます。
(これまでと同じ支給率)
60歳の誕生日の前日※が令和7年4月1日以降各月に支払われた賃金の0~10%が支給されます。
(変更後の支給率)
※60歳誕生日の前日時点で雇用保険の被保険者期間が5年未満の場合は、5年を満たすこととなった日と読みかえます。

現行の給付率と、2025年4月からの給付率を比較すると次のようになります。

60歳到達等時点の賃金月額と比較したときの賃金の低下率が75%以上の場合は、これまでと変わらず高年齢雇用継続給付は支給されません。

賃金の低下率が74.5%以下になると支給されますが、2025年4月以降は支給率が下がり、最高でも10%の支給となります。

【労務管理】標準報酬月額の決まり方と注意点

標準報酬月額

標準報酬月額は、健康保険厚生年金保険保険料や年金給付額等を算出する基礎として、事務処理の正確化と簡略化を図るために設けられているものです。

国保ではなく、勤め先で社会保険に加入している方は、皆さんに標準報酬月額が決められており、それに基づいて月々の保険料が給与から控除されます。

健康保険料率は、加入している健保組合や都道府県ごとに違います。

標準報酬月額の上限と下限

健康保険と厚生年金保険では、標準報酬月額の上限と下限の等級が異なっています。

  • 厚生年金は32等級。標準報酬月額の上限(650,000円)、下限(88,000円)。
  • 健康保険は50等級。標準報酬月額の上限(1,390,000円)、下限(58,000円)。
画像は協会けんぽ宮城県の場合。協会けんぽHPから引用。

厚生年金の標準報酬月額の上限の決まり方

もともと厚生年金の上限の決め方にはっきりとした基準はなかったようですが

  • 高所得だった人に対する年金額があまりにも高くなりすぎないようにする
  • 低所得であった人にも一定以上の給付を確保する

を目的に、平成元年改正以後は、上限額が被保険者全体の平均標準報酬月額のおおむね2倍となるように設定する考え方となり、平成16年に法定化されました。

標準報酬月額の上限に該当する被保険者の割合は、昭和60年以降は6~7%で推移しています。

健康保険制度における標準報酬月額の上限の決まり方

健康保険料率については、保険給付費用の予算額等に照らして、おおむね5年を通じて財政運営の健全性を保てるように決められています。
上限額は、最高等級に該当する被保険者の全被保険者に占める割合が1.5%を超えてその状態が継続すると認められる場合に、一定のルールで政令で等級を追加できることになっています。

標準報酬月額が決定されるタイミング

標準報酬月額は、次のタイミングで決定されます。

資格取得時勤務先で社会保険に初めて加入したとき
定時決定毎年4月~6月に支払われる給与の平均額
随時改定昇給や降給等で固定的賃金に変動があって、変動月から3か月間の報酬の平均額が2等級以上の変更となったとき
※支払い基礎日数等の細かい要件もありますが、ここでは記載を省きます。

ここで、厚生年金と健康保険で標準報酬月額の上限と下限が異なることで、随時改定の手続きにおいて注意が必要になることがあります。

標準報酬月額等級表の上限または下限にかかる随時改定の注意点

標準報酬月額等級表の上限または下限にわたる等級変更の場合は、2等級以上の変更がなくても随時改定の対象となります。

昇給の場合

健康保険
  • 従前の標準報酬が1等級・58,000円で報酬月額が53,000円未満の場合報酬の平均額が63,000円以上で、改定後、2等級・68,000円になります。
  • 従前の標準報酬が49等級・1,330,000円の場合報酬の平均額が1,415,000円以上で、改定後、50等級・1,390,000円になります。
厚生年金保険
  • 従前の標準報酬が1等級・88,000円で報酬月額が83,000円未満の場合報酬の平均額が93,000円以上で、改定後、2等級・98,000円になります。
  • 従前の標準報酬が31等級・620,000円の場合報酬の平均額が665,000円以上で、改定後、32等級・650,000円になります。

降給の場合

健康保険
  • 従前の標準報酬が2等級・68,000円の場合報酬の平均額が53,000円未満で、改定後、1等級・58,000円になります。
  • 従前の標準報酬が50等級・1,390,000円で報酬月額が1,415,000円以上の場合、報酬の平均額が1,355,000円未満で、改定後、49等級・1,330,000円になります。
厚生年金保険
  • 従前の標準報酬が2等級・98,000円の場合、報酬の平均額が83,000円未満で、改定後、1等級・88,000円になります。
  • 従前の標準報酬が32等級・650,000円で報酬月額が665,000円以上の場合、報酬の平均額が635,000円未満で、改定後、31等級・620,000円になります。

【労務管理】労働者と使用者とは

「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」が労働基準監督署に設置されます

2024年11月のフリーランス新法の施行に合わせて、「自分はフリーランスとして働いているけど、働き方が労働者なんじゃないかな・・?」と思っているフリーランスの方に向けた相談窓口が全国の労働基準監督署に設置されます。

※ここでのフリーランスは、業務委託を受ける事業者のことを指します。

フリーランスとして働く人の中には、実際の働き方は労働基準法上の労働者なのに、契約上は自営業者として扱われて、法律に基づく正しい保護が受けられていないといった問題が指摘されています。

労働基準法上の「労働者」にあたるかどうかは、「業務委託」や「請負」などの契約の形式などにかかわらず、実際の働き方等をみて総合的に判断されます。

厚生労働省が出している働き方の自己診断チェックリスト(フリーランス向け)

労働基準法が適用される労働者とは

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法上の労働者にあたるかの判断は、『使用従属性』が認められるかどうか等によって判断されます。

『使用従属性』とは、次の両方の基準をまとめて呼んだものです。

  1. 他人の指揮監督下で労働していること
  2. 報酬が指揮監督下にある労働の対価として支払われていること

「使用従属性」に関する判断基準

「指揮監督下の労働」であること
仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由発注者から仕事を貰った時に、それを受けるかどうか等、自分で決められるか
業務遂行上の指揮監督仕事の内容や、やり方について、発注者から具体的に指示をされて指揮命令されているか
拘束性勤務場所と時間が発注者等から指定されて管理されているか
代替性(指揮監督関係を補強する要素)発注者から受けた仕事を、自分の代わりに誰かにやってもらったり、自分の判断で補助者を使うことが認められているか
報酬の労務対償性報酬のベースが、発注者等の指揮監督の下で行う作業時間等となっているか
「労働者性」の判断を補強する要素
事業者性仕事に必要な機械等は発注者とフリーランスのどちらが用意しているか。
フリーランスが機械等を所有していて発注された作業に当たっている場合などは、自らが事業者として働いている性質が強くなると考えられます。
専属性の程度他の発注者等の業務を行うことが制度上制約されたり、他の発注者等の業務を行うことが時間的に余裕がなく難しかったりする場合等は労働者性が強いと考えられます。
その他採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること 等

労働基準法が定める使用者とは

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

労働基準法で使用者とは、次のように定められています。

・ 事業主

法人そのもの、個人事業主

・ 事業の経営担当者

法人の代表者、役員等

・労働者に関する事項について、事業主のために行為をする者

労働条件の決定、業務命令の発出、具体的な指揮監督等を行うもの(上司の命令の伝達者にすぎない場合は除きます)

使用者は、事業主だけでなく、役員等も含まれ、労働者に指揮命令をして労働をさせ、労働の対価として報酬を支払います。

「松下プラズマディスプレイ事件」(最高裁判所第2小法廷 平成21年12月18日 判決)では、偽装請負いの状態で派遣されていた労働者は『注文者から直接具体的な指揮監督を受けて作業に従事していた』が、「雇用契約は注文者以外と結ばれていた」「注文者は採用に関与していない」「注文者が給与の支払い額を決定していたわけではない」等の事情で、注文者とその労働者の間に雇用関係が黙示的に成立していたとはいえない、としています。

労働の具体的な指揮監督をするだけでは、使用者性が認められないといえます。

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