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【労務管理】9月は「職場の健康診断実施強化月間」です


厚生労働省では、9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置づけ、健康診断及び事後措置の実施の徹底、医療保険者との連携を呼びかけています。

職場での健康診断

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づいて、労働者に医師による健康診断を実施しなければいけません。
また、労働者も、健康診断を受けなければいけないことが定められています。

労働安全衛生法
第六十六条(健康診断)
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

事業者に実施が義務づけられている健康診断の種類

事業者が行わなければいけない健康診断には、次のようなものがあります。

雇入時の健康診断          
(労働安全衛生規則第43条)
常時使用する労働者を雇い入れるときに実施する。
※対象労働者が医師の健康診断を受けてから3か月以内の場合の例外あり。
定期健康診断
(労働安全衛生規則第44条)
常時使用する労働者のうち、特定業務従事者ではない者に対して実施する。
1年以内ごとに1回。
特定業務従事者の健康診断
(労働安全衛生規則第45条)
深夜業を含む業務や、有害放射線にさらされる業務など、労働安全衛生規則で定めている特定の業務に常時従事する労働者(特定業務従事者)に対して実施する。
その業務への配置替えの時と、6月以内ごとに1回。
海外派遣労働者の健康診断
(労働安全衛生規則第45条の2)
海外に6ヶ月以上派遣する労働者に対して実施する。
海外に6月以上派遣する時と、帰国後に国内業務に就かせる時。
給食従業員の検便
(労働安全衛生規則第47条)
事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対して実施する。
雇入れの時と、配置替えの時。

健康診断をした後の措置

令和4年労働安全衛生調査(実態調査)によると、一般健康診断を実施した事業所は全体で90.1%で、そのうち所見のあった労働者がいるのは全体で69.8%となっており、約7割の労働者に所見が見られていることがわかります。

従業員数30人未満の事業所では一般健康診断を実施している割合が9割を下回っており、従業員数が少ないほど、一般健康診断の実施率が低い傾向がわかります。

また、所見のあった労働者がいる割合は、従業員数が多い事業所の方が多いです。

所見のあった労働者に対して、措置を講じた事業所は全体で90.8%となっています。そのうち、医師または歯科医師に意見を聴いた割合が最も多く45.3%となっています。

健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

厚生労働省は、健康診断の結果に基づく就業上の措置が適切かつ有効に実施されるため、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を定めています。

健康診断の実施手順を抜粋すると、次のような流れとなります。

(1)健康診断の実施
事業者は、健康診断の受診率が向上するように、労働者に対して周知や指導に努めます。
(2)二次健康診断の受診勧奨等
事業者は、健康診断の結果、二次健康診断の対象となる労働者を把握して、対象者に受診を勧奨します。
また、二次健康診断の結果を事業者に提出するように働きかけます。
※二次健康診断の対象となる労働者とは
一次健康診断の結果、「血圧検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定」す   べての検査項目について『異常の所見』がでている場合。
または、産業医等が二次健康診断を必要と認めたとき。
(3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取
健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、医師等の意見を聴く必要があります。
意見を聴く医師等は、産業医や、産業医の選任義務がない事業場では地域産業保健センターの活用を図ること等が適当です。
事業者は、適切に意見を聴くため、必要な情報提供をします。就業上の措置に関し、その必要性の有無、講ずべき措置の内容等に係る意見を医師等から聴きます。
(4)就業上の措置の決定等
医師等の意見に基づいて、就業区分に応じた就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ対象となる労働者の意見を聴き、十分な話合いを通じて、その労働者の了解が得られるよう努めます。
産業医の選任義務のある事業場では、必要に応じて、産業医の同席の下に労働者の意見を聴くことが適当です。

その他、健康診断について、次のことを留意する必要があります。

  • 健康情報の保護に留意して、適正に取扱いをする。
  • 健康診断結果の記録は保存する。
  • 健康診断結果は、異常の所見の有無にかかわらず、遅滞なく労働者に通知する。
  • 一般健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を受けさせるよう努める。
  • 再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対して、受診を勧奨し、意見を聴く医師等に検査の結果を提出するよう働きかけることが適当。
  • 再検査又は精密検査は、一律には事業者にその実施が義務付けられていないが、有機溶剤予防規則等で特殊健康診断として規定されているものについては、事業者にその実施が義務付けられているので注意する。

【労務管理】裁量労働制とは


労働基準法では、使用者に対して、労働者に原則として1日8時間・週40時間を超えて労働させてはならないと定めています。

しかし、労働時間制を柔軟にするための特別な制度もあり、昭和62年の労働基準法改正(昭和63年4月施行)によって設けられた「裁量労働制」はそのひとつです。

裁量労働制は、『労働の量(実労働時間の長さ)』ではなく『労働の質(成果)』による報酬の支払いを可能にするものとも言われています。

裁量労働制により、効率的な働き方による生産性の向上や、柔軟で多様な働き方につながるといった労使双方にとってのメリットが期待されますが、一方で、正しく運用されないと長時間労働や労働者の心身に負担をかけやすくなってしまう懸念があります。

似たような制度で高度プロフェッショナル制度というものがありますが、高度プロフェッショナル制度は年収1,075万円以上という年収要件がある一方、裁量労働制に年収要件はありません。

裁量労働制の種類

昭和62年の労働基準法改正によって設けられた裁量労働制は、その後何度か法改正を経て、現在は「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の2つがあります。

専門業務型裁量労働制

対象労働者専門性の高い業務として定められた次の20業務に従事する労働者
1 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
2 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。7において同じ。)の分析又は設計の業務
3 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第28号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材若しくは編集の業務
4 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
5 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
6 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
7 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
8 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
9 ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
10 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
11 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
12 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
13 銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)
14 公認会計士の業務
15 弁護士の業務
16 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
17 不動産鑑定士の業務
18 弁理士の業務
19 税理士の業務
20 中小企業診断士の業務
労働時間労使協定で定めた時間を労働したものとみなす(=みなし労働時間)
導入の流れ①次の必要事項等を定めて労使協定を結び、労働基準監督署長に届出する。
【労使協定の内容】
・対象とする業務
・1日の労働時間としてみなす労働時間
・対象業務の遂行手段等について、使用者が具体的な指示をしないこと
・健康・福祉確保措置
・苦情処理措置
・制度の適用に労働者本人の同意を得なければいけないこと
・制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
・制度の適用に関する同意の撤回の手続き など
②必要に応じて就業規則等の整備、届出。
③労働者本人の同意を得る。同意の取り方について具体的な手続を労使協定で定めることが適当。
④制度を実施する。

また、労働新聞社の報道によると、労働基準監督署の窓口において、『対象業務に付随する補助的業務のみに従事している場合』は要件を満たさないものとして労使協定届を不受理とし、指導文書を交付する対応がとられているようです。

企画業務型裁量労働制

対象労働者事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務のうち、以下の4つの要件すべてを満たす業務を行う労働者
・業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること(例えば対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすもの、事業場独自の事業戦略に関するものなど)
・企画、立案、調査及び分析の業務であること
・業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
・業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
労働時間労使委員会の決議であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす(=みなし労働時間)
導入の流れ①「労使委員会」を設置する
②労使委員会で決議する
【決議しなければならない事項】
・制度の対象とする業務
・対象労働者の範囲
・1日の労働時間としてみなす時間
・健康・福祉確保措置
・苦情処理措置
・制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと
・制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
・制度の適用に関する同意の撤回の手続
・対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと など
③必要に応じて就業規則等の整備、届出。
④労働者本人の同意を得る。同意の取り方について労使委員会で決議することが適当。
⑤制度を実施する。
⓺決議の有効期限の始期から起算して初回は6箇月以内に1回、その後1年以内ごとに1回、所轄労働基準監督署へ定期報告を行う。

裁量労働制を適用されている労働者の傾向

令和3年に公表された「裁量労働制実態調査」によると、 裁量労働制を適用されている労働者には次のような傾向がみられます。
(参考 国立国会図書館 調査と情報―ISSUE BRIEF― No. 1189(2022. 3.31) 裁量労働制をめぐる課題

  • 裁量労働制を適用されている労働者の方がそうでない労働者よりも「1日の平均労働時間数」が21分長く、「労働時間が週60時間以上」の割合や、「深夜に仕事をすることがある」割合も高い
  • 1日の平均睡眠時間は、裁量労働制を適用されている労働者とそうでない労働者でほぼ同じ
  • 健康状態については、裁量労働制を適用されている労働者の方がそうでない労働者と比べて「健康状態がよい」と答える傾向がある
  • 裁量労働制を適用されている労働者の約4割が自身に適用されているみなし労働時間を把握していない

【令和7年度適用の労使協定、派遣一般労働者の賃金水準が発表されました】


【職業安定業務統計の職種が改定されています】

令和7年度の労使協定方式の派遣労働者の賃金額を決定する際に使用する
【同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額】が発表されました。
厚生労働省で発表された全文はこちらです。
令和6年度からの変更点や注意点では、通勤手当を時給に含んで支給する場合の1時間当たりの単価が
72円から73円に1円引き上げられた事、退職金を一般賃金・賞与等に乗じた割合は昨年度と同じ5%のままでした。

令和7年度で最も大きく変わったことは、【職業安定業務統計】の職業種類が改定された事です。
改定された理由は前回の改定時より10年以上が経過し、この間の産業構造、職業構造の変化等に伴い、
求人・求職者の職業認識との乖離が生じている分野もみられた事により改定となりました。

大・中・小分類共に職種が増え、特に小分類では71職種も増加しています。現代の職種の考え方により近い分類になった事で職種を選びやすくなった印象です。

令和6年度まで【職業安定業務統計】から職種を選択していた企業様は、令和7年度では再度、自社で派遣している業務がどの職種に一番適しているかを選択する必要があります。この際に実際に行われている職種ではなく、賃金額が下がることを目的として恣意的に職種や、中・大分類を選ぶことは禁止されています。

令和7年4月1日からの賃金額適用と少し先ではありますが、職業安定業務統計を利用の際は職種の再選択、
一般賃金額上昇による派遣先との派遣料金の交渉、労使協定作成などの準備を少しずつ進める必要があります。

【無許可派遣撲滅に向けた緊急対策が発表されました】


【派遣先事業所への対策が強化されます

滋賀労働局は令和5年8月、令和6年2月に無許可派遣で刑事告発を行い、極めて憂慮すべき事態とし、無許可事業者による労働者派遣を撲滅すべく、県内の派遣先事業所に対する自主点検の実施、事業主団体への要請等の緊急対策を実施すると発表がありました

対策内容としては                                            ①派遣先事業所に対する自主点検の実施。                                  ②派遣先事業主に対するオンラインセミナーの実施。
③事業主団体への緊急要請。 

の3つの対策を実施し、無許可派遣の撲滅を目指すとの事です。

無許可派遣の対策は全国的にも行われており、今後も派遣先事業社への注意喚起などより厳しく行われていくことと思われます。

派遣業務を行うには必ず厚生労働大臣の許可が必要です!

弊所では、派遣・職業紹介の新規許可申請代行を数多く行っています。新規許可取得やご相談などありましたらお気軽にお問合せください。

【労務管理】令和6年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大


現在、週20時間以上働く短時間労働者が厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となるのは、『厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等』です。

令和6年10月から、この短時間労働者の加入要件がさらに拡大されて、『厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等』で働く短時間労働者は、社会保険に加入することが義務になります。

 

厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等とは

新たに短時間労働者が社会保険の加入対象となるのは、次の要件を満たす企業等です。

  • 12か月のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者の総数(※)が51人以上となることが見込まれること

※法人事業所の場合は、法人番号が同一である同一法人格に属するすべての適用事業所の被保険者の総数が51人以上である場合に該当します。

※総数には、短時間労働者や70歳以上で健康保険のみ加入している人は含みません。

※事業所の新規適用時などで過去の実績はないものの、厚生年金保険の被保険者の総数が50人を超える場合は、特定適用事業所該当届を届け出る必要があります。

 

短時間労働者が社会保険の加入対象となる企業等のことを「特定適用事業所」といいます。


特定適用事業所になった場合、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時50人を超えなくなった場合であっても、原則として引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われます。

ただし、使用される被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添えて、特定適用事業所不該当届を届け出た場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることとなります。

短時間労働者が社会保険に加入対象になる要件

以下の条件すべて該当する短時間労働者が特定適用事業所に勤務する場合、加入対象となります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上
  3. 2カ月を超える雇用の見込みがある
  4. 学生ではない

東京都の場合、2024年10月以降は最低賃金1,163円となる見込みですので、週20時間以上勤務する場合は「2.所定内賃金が月額8.8万円以上」は自然と満たすことになりそうです。

所定内賃金が月額 8.8 万円かの算定対象は、基本給及び諸手当で判断します。
ただし、次の①から④までの賃金は算入されません。
【算入されないもの】

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
  • 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

なお、健康保険の被扶養者として認定されるための要件の一つに、年収が 130万円未満であることという収入要件がありますが、この要件に変更はありません。
なので、年収が130万円未満であっても、4分の3基準又は4要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。


「これまで家族の扶養に入っていて、扶養の要件は満たす」ものの、「新たに4要件を満たすことで扶養から抜けて、自ら社会保険に加入する」というケースが出てくることが想定されます。

お知らせが送付されます

新たに適用拡大の対象となることが見込まれる事業所には、令和6年9月上旬までに「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付される予定です。

さらに、令和5年10月から令和6年8月までの各月のうち、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が6か月以上50人を超えたことが確認できる場合、対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。
この場合、日本機構で特定適用事業所に該当したものとして扱うので、特定適用事業所該当届の届出は不要ですが、加入対象になる短時間労働者がいる場合は、「被保険者資格取得届」等の提出は事業所側で必要となるので注意しなければいけません。

適用拡大の対象となる従業員についての届書の準備、社内周知・従業員への説明等の期間が必要となりますので、早めの準備をお願いします。

【労務管理】休職制度とは


休職制度は、労働基準法で定められたものではなく、会社が独自で定める制度です。

会社が独自に定める制度なので、内容はそれぞれですが、一般的に「労働者が業務外の理由で一時的に労働ができなくなった場合、すぐに解雇せず、会社が定めた期間、在職扱いとする」ケースが多いと思います。

長らく日本では終身雇用制度が定着していたので、病気やケガなどで一時的に働けない従業員の雇用を守るために利用されてきた制度と思います。


近年では、リスキリングなど能力開発のための休職制度が設けられている会社もあるようです。

少し前の調査ですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査-労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅱ)-」(2004年11月22日~12月10日実施)によると、

何らかの休職制度のある企業(「病気休職」「自己啓発休職」「起訴休職」「事故欠勤休職」「出向休職」「その他(専従休職等)」のいずれかを選択した企業。以下同じ。)の割合は、69.3%となっており、休職は法律上の制度ではないものの、多くの会社で取り入れられている制度だと言えます。

従業員を一定期間休職させる制度や慣行の状況(複数回答、%)

  • 「私傷病による休職(病気休職)」69.1%
  • 「自己都合による長期欠勤のための休職(事故欠勤休職)」37.4%
  • 「刑事事件で起訴されて就業ができないときの休職(起訴休職)」が20.1%
  • 「留学など能力開発のための休職(自己啓発休職)」が12.5%
  • 「従業員の他社への出向期間中になされる休職(出向休職)」7.2%
  • 「特にない」28.7%

モデル就業規則による休職規定

厚生労働省労働基準局監督課が出しているモデル就業規則(令和5年7月版)では、休職について次のように書かれています。(※読みやすいように空欄を●に書き換えています)

(休職)
第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
① 業務外の傷病による欠勤が●か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき  ● 年以内
② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき  必要な期間
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

【第9条  休職】

1 休職とは、業務外での疾病等主に労働者側の個人的事情により相当長期間にわたり就労を期待し得ない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。なお、本条第1項第2号の「特別な事情」には、公職への就任や刑事事件で起訴された場合等が当たります。

2 休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然に休職が解除され復職となります。

3 休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません。

モデル就業規則(令和5年7月版)厚生労働省労働基準局監督課

メンタルヘルス不調による休職

厚生労働省の患者調査によると、精神疾患を有する総患者数は、2002年から2017年までの15年間で1.6倍も増加しているようです。
職場でも従業員のメンタルヘルス不調に対応する場面は増えていることと思います。

鬱病などの療養のために休職制度を使う場面において、一般社団法人日本産業保健法学会が公表している「産業保健職の現場課題に応える」Q&Aが参考になるのでご紹介します。

Q1
 適応障害やうつ病等の精神疾患のために休職している従業員が、休職期間中に趣味の活動(音楽活動や旅行等)をしていた場合、療養専念義務に違反し、会社から注意指導や懲戒処分の対象となり得るでしょうか。

A1
総論
 休職期間中に趣味の活動をしていることをもって直ちに懲戒処分を行うことは適当でないことが多いと考えられますが、医療者の判断に従わせること、それに基づき、会社秩序の観点で注意指導を行うことは可能です。
 そのためにも、先ず就業規則上、療養専念義務、必要な場合の主治医への意見聴取、指定医等への受診、逸脱行動の可否を会社の許可制としておくことが重要です。

「産業保健職の現場課題に応える」Q&A 一般社団法人日本産業保健法学会

精神疾患での病気休業中、趣味の活動をしているのを同僚から見つかってしまい、波紋を呼ぶことがあるようです。
ただ、精神疾患での療養には≪趣味の活動が精神衛生上良い方向に働いて療養につながる場合≫があり、一概に療養遷延義務違反とはいえない場面があります。

趣味の活動が療養に繋がるのかどうか、その活動が療養するうえで良くないことなのかの判断は、労務担当のみですることは困難ですから、対応としては、
・会社側が休職者の同意を得た上で、主治医に照会する
・休職者の病状、活動制限等の指導内容及び趣味的活動による療養への影響等について確認する
ことが基本となるようです。

一般社団法人日本産業保健法学会では、就業規則や休職に入る際に手渡す書類のなかに、
「休業中は療養に専念し、回復した際の復職を円滑に進めるためにも、無用の誤解を招くような言動を行わないよう留意して下さい。逸脱行動をとる場合には、医師の許可を得るとともに、会社の許可を得てください」
といった一文を入れておくことを提唱しています。

【労務管理】労基調査・ソフトウェア業界


労働時間の管理や長時間労働について、東京で調査が大々的に行われているようです

7月にソフトウェア業の顧問先のお客様に調査が入りました。いわゆる定期調査です。
問題は全くないお客様ですので、調査については無事終わったのですが、監督官から言われたのが、
「東京の労基では全般的に、ソフトウェア業の会社を調査をしている」とのことでした。
私どもの事務所でも、東京に、ソフトウェア業の顧問先のお客様が特に多いので、問題ないか確認する
必要があります。
ポイントは、
①労働時間を従業員の自己申告制にしている場合、「サービス残業」になっていないか
②長時間労働になっていないか、なっている場合の対応(労働時間の削減、面談の実施など)
長年、労基から言われ続けていることではあるのですが、改めて、このようなことを調査されているようです。
従業員さん自身が、「労働時間とは」「長時間労働とは」「健康に留意した働き方とは」を理解し、
認識を深めるように会社側が方策を実施していく必要があると思われます。

 

【有料職業紹介業、お祝い金の規制強化へ】


【お祝い金・転職勧奨を原則禁止、法令違反は許可取り消しも】

厚生労働書は有料職業紹介事業者において禁止されている【就職お祝い金】【転職勧奨】の法令違反が多数みられることから、規制強化を進める方針です。許可条件にお祝い金、転職勧奨の禁止を定めるとし、違反事業者の事業許可を取り消せるようにします。

令和3年4月から職業安定法の指針で「お祝い金」その他これに類する名目で、求職者に社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭などを提供することで求職の申し込みの勧奨を行ってはならないと、禁止されています。
これまで指導があった例では、お祝い金で、面接実施時に数千円分のギフトカードを支給していたケースや、いったん就職した求職者にしばらくすると、お祝い金を支給すると話を持ち掛けて転職を勧奨するなどして、繰り返し就職させ手数料を得ようとする事業者が見られます。また、介護・医療系の会社に多いのが職業紹介事業者が介護・医療系会社に就職したら介護・医療に関する資格取得相当費用を負担するといった例でこちらもお祝い金に相当したケースがあります。

就職した求職者が早期に離職する事の無いように規制が強化される模様です。許可取得を考えの事業者様、職業紹介事業を既に運営中の事業者様も十分に注意が必要となります。

【派遣許可後の運営についてもサポートいたします】


【同一の派遣事業所で複数の是正指導が多数生じています】

東京労働局が令和5年度の民間人材ビジネスに対する指導状況を取りまとめた報告がありました。
指導監督を実施したのは延べ3531件、文書により是正指導を行った件数は3692件で昨年度から0.8%上昇しています。
実施件数より、是正指導件数が多い理由は同一の事業所で複数の項目で指導を行った事や、繰り返し指導を行ったことが要因となっています。
是正指導が行われた派遣事業所は2908件で、同一労働同一賃金に関する労使協定の賃金額の不備が多発。派遣労働者の賃金算定として通勤手当に相当する支給が義務付けられているがこちらの計算ミスが多い結果となっています。
複数項目で指導を受けている会社は労使協定の不備の他、就業条件の明示をしていなかったり、派遣元管理台帳に不備が多いようです。

派遣許可を取った後も、様々な守るべき法律の中で派遣業を運営していくことが必要となります。違反により指導是正、改善命令、許可取り消しとなる事例もございます。
弊社では派遣・職業紹介の許可申請はもちろんですが、許可後の運営方法についてもサポートするサービスがございます。
労使協定方式の基準賃金は毎年変更となる事から毎年計算が必要となりこちらの計算金額の算出方法・確認を始めとした労使協定作成に対する確認・助言や、都度ある法改正への対応、運営上の注意点などに関する情報、毎年6月に報告する年度報告書の作成方法、派遣運営全般についてアドバイスするサービスを行っています。

派遣の許可は取ったけど法律の事は良く解らない、自分の会社は違反をしていないだろうかと不安でいる、毎年の労使協定作成に頭を悩ませている等、ご興味のある事業主様は是非お問合せください。

【労務管理】副業と社会保険


副業の推進

政府は、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)において、「労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」としており、今後、副業をする人は増える傾向にあると思います。

一方で、平成28年10月から短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が実施されており、フルタイムでない働き方をする場合にも、企業などで働く方が厚生年金保険や健康保険といった「社会保険」に加入するケースが広がってきています。

そのため、今後、「主たる勤務先」と「副業先」どちらでも社会保険に加入しなければいけないケースは増えてくると思います。

パートタイマー・アルバイト等の方が社会保険に加入するケース

パートタイマー・アルバイト等が、事業所と常用的使用関係にある場合、次の働き方をしていると社会保険に加入するようになります。

  1. 1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上の場合
  2. 「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務していて、以下のすべてに該当する場合
    ・週の所定労働時間が20時間以上あること
    ・賃金の月額が8.8万円以上であること
    ・学生でないこと

特定適用事業所とは

1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が101人以上※となることが見込まれる企業等のこと。  ※令和6年10月からは厚生年金保険の被保険者数が51人以上

ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するケース

ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するようになるケースを考えてみます。

① 通常の労働者の4分の3以上

事業所によって「通常の労働者」の時間は違いますが、仮に「通常の労働者」が1日8時間、週5日勤務とすると、ダブルワークでどちらの勤務先でも社会保険に加入するのは、次のような働き方が考えられます。

8H×週5日×4分の3=週30時間

(例)
主たる勤務先 1日6H×週5日(週30時間)
副業先    1日6H×週5日 (週30時間)  

昼も夜もフルタイムに近い働き方をする方や、複数事業所で常勤取締役をするなどが考えられますが、週1日も休みなく働いたり、1日12Hを恒常的に働くようになるので、あまり多くの方は該当しないものと思います。

② 特定適用事業所で週20時間以上

特定事業所で週20時間の勤務をしている場合、仮に1日4時間、週5日勤務とすると次のような働き方が考えられます。

(例)
主たる勤務先 1日4H×週5日 (週20時間)
副業先    1日4H×週5日 (週20時間)

午前と午後で勤務先を分けて働いている場合などが考えられます。
賃金の月額が8.8万円以上であること、学生でないこと、も満たす必要がありますが、最低賃金も上がってきているので、月額要件は満たす場合が多いと考えられます。


副業が活発になると、このような働き方をする方が増えることも考えられるのではないでしょうか。


また、主たる勤務先が①で、副業先が②、などのケースも考えられると思います。

複数の事業所で社会保険に加入するようになったときの手続き

「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を届出し、主たる事業所を選択して管轄する年金事務所または保険者等を決定します。

保険料

社会保険料の標準報酬月額は、「それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額」で決定されます。

さらに、決定された標準報酬月額の保険料額を、「それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分」して、保険料が決定され、それぞれの事業所へ通知されることとなります。

健康保険証

健康保険証は、選択した事業所のみで健康保険証が発行されます。

報酬に変更があったとき(月額変更)

「各事業所について随時改定の要件に該当するかどうか」で判断することになります。

それぞれの事業所で固定的賃金が変動し、2等級以上の差が生じていれば、月額変更の届出をすることになります。
あくまで、それぞれの事業所で該当するか否かを確認するので、届出にあたり、他方の事業所の報酬を気にする必要はありません。
ひとつの事業所で月変に該当した場合には、合算して2等級以上の差が生じていない場合でも随時改定が必要になります。

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